「食べた瞬間、手が止まった」 裁判所書記官で作家の菰野江名がタイ料理の屋台で再会したノスタルジックな味
細胞が「おかえり!」と手を振っているかのような味の既視感
裁判所書記官として働きながら『つぎはぐ、さんかく』で第11回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビューした、作家の菰野江名さん。愛知県の野外民族博物館を訪れた彼女は寒空の下、温かなかぼちゃとココナッツミルクのスープを口にする。ノスタルジックな記憶が、ふわりと思い起こされて……
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23、24歳の頃、私は愛知県にある野外民族博物館を訪れていた。2月の寒い日で、私は暖を求めてタイ料理の屋台に駆け込み、スープを注文した。かぼちゃとココナッツミルクのスープだった。...