「不適切にもほどがある!」の真実 数字が示す“最も熱心な視聴者”は意外な層

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ドラマの核心になるのは「家族」か

 純子は「チビで薄毛のおっさん」と市郎を罵りながら、彼のために自発的に好きなテレビ番組を録画し、焼きうどんをつくる。市郎も純子に対し「ブス」と言い放ちながら、彼女のお宮参りの写真とヘソの緒を大切に持ち歩いている。ドラマにありがちなスマートな家族、あるいは甘いだけ、あるいは厳しいだけの親子関係とは異なる。世間の家族関係も単純ではないはずだ。

 最終的にドラマの核心になるのも家族だと見ている。昭和後期と現代で激変した価値観、文化・文明を描きつつ、いつの時代も変わらない家族愛を表すと読む。自分と純子が1995年1月の阪神・淡路大震災で亡くなることを知った市郎がどう動くのか。

「オレはいいんだよ。いつ死んでも。だけど純子が。まさか26歳でなぁ……」(市郎、第6回)

 市郎の純子への愛は若い世代の胸も打つのではないか。

タイムリープ作品の大半は若い世代向け

 そもそもドラマも映画もタイムリープ作品は大半が若い世代向けなのだ。発想が柔軟で、夢にあふれた世代だから、非現実的な世界も受け入れやすい。

 映画で一例を挙げると、「時をかける少女」(83年、ドラマ化もあり)、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ(85年~)、「バタフライ・エフェクト」シリーズ(04年~)、「もしも昨日が選べたら」(06年)、「きみがぼくを見つけた日」(09年)、「君の名は。」(16年)。ことごとく若い世代向けなのである。

 このところ、日本テレビ「ブラッシュアップライフ」(23年)やTBS「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」(同)などタイムリープを扱ったドラマが増えた。タイムリープ作品の増加は世界的なトレンドだが、日本のドラマ界の場合、若い世代の視聴者が見込めるからだろう。すると各局が重視するコア視聴率が高まる。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。放送批評懇談会出版編集委員。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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