話題の「不適切にもほどがある!」には大きな誤解がある…冬ドラマ17本、視聴率を検証

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ストレスが溜まらない「ナースエイド」

 世帯視聴率の最大の欠陥は「高齢者の好み」が数字を大きく左右するところ。1990年の時点で65歳以上の高齢者のいる世帯は全体の26.9%で約4分の1に過ぎなかったが、極端な少子高齢化で2021年には約半分の49.7%にまで急上昇したからだ(内閣府調べ)。

 一方、個人視聴率の数字は「100人中、何人が観たか」を表す。コア視聴率は「13歳から49歳の100人のうち、何人が観たか」である。観ていた人の世代や性別も細かく分かる。

●個人3位(4.4%)/コア6位(2.4%)
日本テレビ「となりのナースエイド」(水曜午後10時)2月21日放送の第7回

「となりのナースエイド」は川栄李奈(29)が演じるナースエイド(看護助手)の主人公が活躍する医療ドラマ。川栄の溌剌としたキャラクターもあって、作風は全体的に明るい。また、主人公の奮闘は最後には認められるから、ストレスが溜まらない。それが高い個人視聴率の大きな理由だろう。

 半面、ナースエイドの主人公が手術室に入ってしまうなどリアリティは二の次。コア世代にはやや物足りないのではないか。

世帯視聴率の特性が顕著なドラマ

●個人4位(3.8%)/コア9位(1.9%)
テレビ朝日「グレイトギフト」(木曜午後9時)2月22日放送の第6回

●個人5位(3.3%)/コア4位(2.6%)
TBS「Eye Love You」(火曜午後10時)2月20日放送の第5回

「グレイトギフト」は、ドラマにはまず登場しない「病理医」を主人公とし、ストーリーのカギを握るのは「殺人球菌」。まず、このオリジナリティが買える。ストーリーにも破綻がない。主演の反町隆史(50)の哀愁を漂わせた演技もいい。

 コアが低い理由の1つは若い世代にはピンと来ないドロドロとした人間模様が描かれているからだろう。

「Eye Love You」は二階堂ふみ(29)の演じる主人公が、テレパスの持ち主であり、他人の心の声が読み取れる。相手役に韓国実力派俳優のチェ・ジョンヒョプ(30)を配した見応えのあるファンタジー・ラブストーリーである。

 しかし、高齢者の多くはファンタジーもラブストーリーも好まないから、世帯視聴率は5.9%と低い。映画だってファンタジー・ラブストーリー作品のお得意様は若者なのである。世帯視聴率の特性が顕著になっているドラマ。

ハンデを個性と捉えた「厨房のありす」

●個人6位(3.0%)/コア5位(2.5%)
日本テレビ「厨房のありす」(日曜午後10時半)2月25日放送の第5回

●個人6位(3.0%)/コア8位(2.0%)
フジ「君が心をくれたから」(月曜午後9時)2月19日放送の第7回

「厨房のありす」はハンデを個性と捉えたところが新しい。「ハンデのある人は悲劇の人」として描きがちだったドラマ界に一石を投じている。門脇麦(31)が演じる主人公には自閉スペクトラム症(ASD)というハンデがあるが、明るくて純粋無垢。周囲の大人たちの心を洗う。

「君が心をくれたから」は永野芽郁(24)が演じる主人公が、好きな人である山田裕貴(33)を救うため、五感を差し出す物語。「Eye Love You」と同じくファンタジー・ラブストーリーであるため、やはり世帯視聴率は低く、5.1%。個人、コアと順位の隔たりが大きい。

 毎日新聞、産経新聞は視聴率ランキングを個人視聴率の順位に基づいて作成するようになった。世帯視聴率を単独表記する新聞は消えている。年内にも新聞から世帯視聴率は消滅するのではないか。

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