「俺が出るまで待っとけよ」東名あおり運転男の暴言はまだ序の口だった…過去には刺身包丁で刺されたり、拳銃で脅された裁判官も【凶暴過ぎる被告列伝】

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 反省が見られない被告を、今後も弁護する必要などあるのか──SNSなどに相次いで投稿された怒りの声をまとめると、こんな具合になるだろうか。毎日新聞(電子版)が2月26日に配信した記事、「『俺が出るまで待っておけよ』 東名あおり事故の被告、裁判官に」はネット上で拡散して注目を集め、多くの読者が憤りを露わにした。

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 2017年6月、神奈川県大井町の東名高速道路下り線を乗用車で走行していた石橋和歩被告は、一家4人が乗るワゴン車に妨害運転を繰り返して停車させた。これが原因で大型トラックによる追突事故が発生。父親と母親が死亡し、娘2人が軽傷を負った。

 石橋被告は自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)などで起訴。18年12月、横浜地裁での裁判員裁判は懲役18年の判決を下した。

 ところが19年12月、東京高裁は横浜地裁における公判前整理手続きに不備があったと問題視し、一審判決を破棄。再び横浜地裁で差し戻し審が開かれ、22年6月、改めて懲役18年が言い渡された。

 そして2月26日、東京高裁で差し戻しの控訴審における判決公判が開かれ、裁判長は差し戻し後の1審判決を支持、石橋被告の控訴を棄却した。担当記者が言う。

「判決の言い渡しが終わると、信じられないことが起きました。石橋被告が退廷する際に、裁判官に向かって、『俺が出るまで待っておけよ』と言い放ったのです。様々な解釈が可能な発言ではありますが、やはり“お礼参り”を示唆した脅迫と考えて間違いないでしょう。XなどSNSでは毎日新聞の記事を引用し、石橋被告の暴言を非難する投稿が相次ぎました」

工藤会の裁判でも脅迫

 テレ朝newsは石橋被告の脅迫行為を報道した際、特定危険指定暴力団・工藤会(本部・北九州市)のトップ、野村悟被告も判決公判で裁判長を脅したことに触れた(註)。

「工藤会は福岡県内で一般市民を襲撃した4つの事件を引きおこし、野村被告は殺人罪や組織犯罪処罰法違反罪(組織的な殺人未遂)などで起訴されました。2021年8月に福岡地裁が死刑判決を言い渡すと、野村被告は裁判長に向かって『公正な判断をお願いしたのに全然公正じゃない』、『生涯後悔するぞ』と大きな声を上げたのです。これも明白な脅迫行為だと言えます」(同・記者)

 テレ朝newsの記事では省略されたが、この日の法廷では工藤会ナンバー2の田上不美夫被告にも無期懲役の判決が下り、田上被告も裁判長に向かって脅しの文句を口にした。

「田上被告は、裁判長の名字をさん付けで呼び、『ひどいな、あんた』と言い放った上で、『東京の裁判官になって良かったね』と思わせ振りな発言をしました。裁判長は2019年の初公判から結審まで野村・田上両被告の公判を担当しましたが、21年4月に東京高裁に異動したのです。そのため判決公判では福岡に出張して判決文を読み上げました。田上被告の発言に『今も福岡地裁に勤務していたら、身に危険が及んだぞ』という脅迫の意図があったのは明らかでしょう」(同・記者)

「俺は平清盛の末裔だぞ!」

 石橋、野村、田上の各被告による暴言は常軌を逸している──呆れ、怒りを覚える人は多いに違いない。だが実のところ、裁判官に捨て台詞を吐く被告は極めて珍しい──というわけではないのだ。

 2017年3月、祈祷師を自称する男性被告の初公判が宇都宮地裁で開かれた。被告は「龍神」を名乗り、難病を治す力を持つと公言。1型糖尿病だった小学2年生の男児の母親から相談を受けると、インスリン投与を中止させて男児を衰弱死させたとして逮捕され、殺人罪などで起訴されていた。

「初公判で被告は入廷すると、『始まる前にちょっと』と発言しました。当然ながら裁判長が制止しました。続いて裁判員が入廷すると、再び『開廷前に一言』と発言。同じように裁判長が制止すると、『あなたは罷免だ! 冤罪だ!』と叫んだのです。その後も不規則発言を続けたため、退廷を命じられました。刑務官が近藤被告を連れ出そうとすると、『八百長裁判長!』と叫び続けたのです。『俺は平清盛の末裔だぞ!』と叫んだと報じたメディアもありました」(同・記者)

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