「うずらの卵」で小1男児が窒息死 「当面、給食での使用を控える」という行政方針に何故かネット世論は猛反発 専門家は「騒音による長野市の公園廃止が分岐点」

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車いすユーザーが炎上した理由

「多くの人々が『自分もジャングルジムで遊んでいたが、ケガはしなかった』という認識を持っています。そこに事故が起きてジャングルジムが撤去されると、『例外的な事故を規準とし、多数派であるはずのジャングルジムを楽しむ権利が阻害されるのはおかしい』と反発するようになったのです。この構図は、うずらの卵でも同じだと思います」(同・井上氏)

 多くの人々が「自分もうずらの卵を食べてきたが、喉に詰まらせたことはない」と認識している。

 そのため悲劇的な事故を踏まえて「うずらの卵は当分、給食での使用を見合わせる」と行政が判断すると、ネット上では「確かに悲しい事故だが、例外的なケースを参考にして、うずらの卵が好きだという多数派の楽しみを奪ってほしくない」と強く反発するというわけだ。

「2021年4月、車いすユーザーがブログに『車いすはJRで乗車拒否されました』と投稿し、最終的に批判が殺到したこともネット世論の変化に大きな影響を与えたと思います。車いすのユーザーが無人駅で降りようとして、JR側と衝突した経緯を伝えたものですが、旅程の一部で『JRへの事前通告』がなかったとして炎上状態になりました。『多数派は旅行をする際、交通機関や飲食店、宿泊先などへ事前に連絡したり、予約を入れている。そうしたルールを守らない少数派の意見は、耳を傾ける必要はない』という意見が多数を占めた事例として、重要な出来事だったと考えています」(同・井上氏)

迷惑系の懸念

 ネット世論は極端な意見が目立つという傾向はあるが、井上氏は「少なくとも、うずらの卵の場合は当てはまりません」と指摘する。

「Xなどを注意深く見ていると、うずらの卵の使用を控えることに賛意を示す意見も、しっかり投稿されていることが分かります。この問題におけるリアルな賛成派と反対派の割合が、そのままネット上に反映されていると考えていいでしょう」(同・井上氏)

 ネット世論は右から左へ、左から右へ、と極端から極端に振れ、最終的には「落とし所」が見つかるのが一般的だ。ネット世論における「多数派と少数派」の問題も、同じ経緯を辿るという。

「かつてネット世論の主流は『少数派の意見に耳を傾けよう』でしたが、今は『多数派の意見を大切にしてほしい』に変わりました。しかし、いつか再び『少数派の意見を尊重すべき』という議論が生じるはずです。こうして振り子が揺れ動く様子が可視化されているのが、ネット世論の優れた点ではないでしょうか(同・井上氏)

 メリットもあれば、デメリットもある。懸念されるのは、いわゆる“迷惑系”の跳梁跋扈だ。

「ネット世論を悪用し、攻撃的な言説を撒き散らす層が出現する可能性があります。具体的には、うずらの卵の使用を控えると発表した教育委員会に嫌がらせの電話をかけたり、現地に出向いて動画を撮影したりする行為です。こうした連中が目立つと、ネット上の良識派が攻撃に回ります。議論が議論を呼び、収拾がつかない状態となってしまい、論点がどんどんズレていきます。何が問題だったのか世論が忘れてしまうような状態になってしまうことは、最悪の結末と言わざるを得ません」(同・井上氏)

デイリー新潮編集部

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