小1男児が給食つまらせて“窒息死”…痛ましい事故も「うずらの卵」使用中止は最適解なのか? “悪者にされる食品”について考える

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利益相反

 2008年、この件で政治家に疑惑の目が向けられたことがある。こんにゃくゼリーを食べた1歳9ヶ月児が亡くなったことを受け、野田聖子消費者行政担当相(当時)は、販売禁止措置を農林水産省に働き掛けるか否かを検討する考えを、明らかにしたのだ。そしてその2日後、製造元のマンナンライフ(群馬県富岡市)の鶴田征男会長ら幹部を内閣府に呼び、自主回収検討を要請した。その後同社の「蒟蒻畑」は形とパッケージを変更した。それが前出の対策である。

 この時、野田氏が問題視したのは、それまでの歴史で17人が死亡しているという事実だった。一方消費者庁が2018年~2019年に調査したところ、65歳以上で餅を食べ窒息死した人は661人いたという。消費者庁の調査では、餅を食べて死亡した0歳~14歳は、2014~2019年までで80人。わずか6年の期間でこんにゃくゼリーよりも多い。だが、規制はされない。

 そして、この時ネットで野田氏に対して批判が出たのは、群馬のマンナンライフに対しては回収・対策要求をした一方、野田氏の地元のこんにゃくゼリーメーカーには同様の要求をしたとの報道はなかったことだ。利益相反ではないかとの疑惑が出たのである。

本質的な問題は食べ方

 そして、「政治」以外でいえば「伝統」が影響しているかもしれない。前出の【悪者にされる食品】ユッケ、レバ刺し、鳥刺し(南九州を除く)と【悪者にされない食品】フグと毒キノコとの整合性がつかない理由は、それぐらいしか思いつかない。肉食文化は明治以降だが、フグと毒キノコはそれ以前からある。これも空気感で決まっているようにも感じられてしまう。なにしろ少なくともユッケとレバ刺しについては、非衛生的な管理・処理をしたごく一部の店による被害発生だったのだから。

 こうしたよく分からない「空気」「政治」と「他責思考」が蔓延した日本では、ヘタするとモンスターペアレントがこんな要望をしてくるかもしれない。

「給食を食べる時に先生が注意すべき食材を児童に伝え、そのうえで、よく噛むことを周知し、必要とあらば食べ方を実演する。そして、プラスチック製のナイフを給食には必ずつけ、できるだけ小さくするよう指導すべき」

 そんなのは家で教えなさい。学校にそこまで任せてはいけない。そもそも、本質的な問題は食材にあるのではなく、食べ方にあるのだ。慌てて食べるから喉に詰まらせるのだ。余裕を持って食べるべく、給食の時間を延ばしてもいいではないか。或いは高齢で咀嚼能力が低下している場合だ。それはこんにゃくゼリーしかり、餅しかりである。種なし巨峰の皮を勢いよく押し、口の中に吸い込んでも危険だ。

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