巨人の1番打者候補は4人… オープン戦3連戦で気になった3点【柴田勲のコラム】

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仕上がりが早い

 球春の訪れを告げるキャンプが始まったと思ったら、アッという間にオープン戦が開幕した。公式戦まであと1カ月ちょっとだ。

 それにしても最近の選手たちの仕上がりは早い。いつ公式戦が始まってもおかしくないという印象を受ける。そして以前と比べて、調整というより、より実戦的だ。

 巨人は23日から沖縄で阪神、広島、ヤクルトとの3連戦を行った。阪神との試合では11安打9得点の攻撃で快勝した。

 昨年は6勝18敗1分けと惨敗し、また開幕戦の相手でもある。阿部慎之助新監督にもいいスタートになったと思う。

 まだ始まったばかりだが、この3連戦で気になったことが3点あった。

低めを意識すべき

 1点目は菅野智之だ。阿部監督は戸郷翔征、菅野、そして山崎伊織の順番で先発に起用した。今季はこの三人を軸に回していくという意志表示だろう。

 三人とも1イニングで戸郷14球、菅野11球、山崎8球だったが、菅野の投球で気になったのは外角低めへのボールがただの1球もなかったことだ。

 投げ方のせいなのか、それともいかないのか。相手打者のベルト上周辺のボールが多かった。もちろんフォークは違う。

 昨年は4勝8敗、防御率3.36と不本意な成績に終わった。今季は復活を期すことになるが、これではキツい。

 昨シーズンはボールが高めにいく投球が多かった。結果、コースは別としてベルト上のボールを狙われることになった。打者は打ちやすい。もっと低めを意識する必要がある。

 菅野は長年エースとして巨人投手陣を支えてきたが今年10月で35歳になる。年齢的にも分岐点だ。復活を期す覚悟なら投球の原点である外角低めを磨いてほしい。

大城のミットの位置

 話題の新人、西舘勇陽投手はもう少し制球力が必要だ。ボールそのものはいいと思う。真っすぐには力がありそうだ。

 でも、いまのままだと荒れ球になってしまう。いざという時にポンとストライクを取れるといい。外角低めならなおさらいい。変化球の習得よりも制球力を磨くことだ。長いイニングを投げることができるようになる。

 二つ目は大城卓三が構えるミットの位置である。ミット1個分高い。他の捕手たちと比較するとよく分かる。

 この3連戦、巨人の投手たちの多くはストライクを先行させていた。四球を嫌う阿部監督の方針だろう。投手は四球から大量失点するケースが実に多い。

 オープン戦のうちからストライク先行を徹底させようという狙いには賛成だ。

 大城は大柄だ。どうしてもミットを高く構える傾向がある。ストライク先行でいいのだが、片膝をついてミットを自分のヒザ周辺、あるいは相手打者の膝頭あたりに構える。

 ミット1個分低くなるよう工夫することが必要だと思う。

打順が問題

 最後は1番打者問題だ。野球は1番と4番が決まれば、あとの打順は臨機応変に組める。4番は岡本和真だ。これは不動だ。

 現在の時点で1番候補は松原聖弥、門脇誠、吉川尚輝の三人に加え、新人の佐々木俊輔(日立製作所)となろうか。秋広優人は1番としてはピンとこない。

 佐々木は中堅から左翼方向への打球が多い。いまのところ相手投手はエース級ではないがそれなりに対応ができている。力がありそうで悪くない。足も遅くない。

 仮に松原が左翼で1番とすれば打順は2番・門脇(遊撃)、3番・坂本勇人(三塁)、4番・岡本(一塁)、5番・丸佳浩(中堅)、6番・新外国人のルーグネッド・オドーア(右翼)、7番・大城(捕手)、そして8番は吉川(二塁)。3番と5番は入れ替えOKだ。

 こんな打順が考えられる。いずれにせよ、新外国人選手の出来次第にもなろうが、1番に門脇、吉川、佐々木が入った場合にもさまざまな打順が組める。

1番の出塁は絶対条件

 1番の条件はまず出塁率だ。3割5分前後は欲しい。打率は2割7、8分、四球数は50個だろう。

 当然のことだが固定が望ましい。私は20年間の現役生活で1年目は投手、あとの19年間は外野手としてそのほとんどを1番でプレーしてきた。

 通算打率は2割6分7厘、出塁率は3割4分7厘、四死球数は外野手としての19年間で954個、平均すれば約50個だった。

 V9時代はボールが先行しているうちは必ず「待て」で制約があった。おかげで三振数も多いけど、死球やエラーでもなんでもいいから塁に出ろと言われた。平均約50個の四死球数も評価されたのだと思う。

 巨人の1番争いはこれからが本番だ。いまのオープン戦は以前と違って、公式戦につながる実戦そのものだ。

 松原であれ佐々木、門脇、吉川であれ、オープン戦で仮に3割を打ち続けるなら公式戦に入っても代える必要はない。

 開幕まであと1カ月ちょっとだ。1番はなにがなんでも出塁する。これが条件だ。

 今後も巨人の1番争いに注目したい。

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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