妻と不倫相手、どちらとも家庭を築く…「これが自分の誠意の示し方だった」という50歳夫の末路

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 結婚してから本気で好きになった人が現れたとする。一般常識からいえば、離婚して好きな人と再婚するか、好きな人を諦めて結婚生活に戻るか、ずるいけれど不倫という形で恋愛を続けるかの3択だろう。だが、中には「どちらとも家庭を築く」という選択をする人もいる。

「妻が完全に認めているわけではないし、社会通念上、もちろんいいことをしているとも思っていない。でもこれが自分の誠意の示し方だったと言うしかないんですよ……」

 困惑顔でそう話す飯田尊仁さん(50歳・仮名=以下同)は、32歳で脱サラし、「小さいながらも」自分の事務所をもっている。当初は苦労もしたが、今は従業員10人を抱える会社に成長した。

 見た目はごくごく普通の中年男性。だがときおりニコッと笑った顔が魅力的で、悪い人ではないと誰もが思うに違いない。

祖父母と父に裏切られた

「ごく普通の田舎町で育ちました。祖父母は農業、父は兼業でサラリーマンをしていた。祖父母の言いなりになるしかなかった母を見ているのがせつなかったという記憶しかありません。一刻も早く家を出たかった。4歳年上の姉が東京の親戚の家から都立高校に通ったので、僕も同じようにしてもらいました。僕が出て行くとき、母に『ごめんね』と言ったら、『いいの。あなたは自由に生きなさい』と言ってくれた」

 ただ、その母は彼の大学合格を知ると、それを待っていたかのように急逝した。具合が悪かったのに我慢しつづけ、倒れたときはすでに手遅れだった。祖父母も父も、母の余命がいくばくもないことを彼には知らせてくれなかった。

「せっかく大学に通い始めたところで、そんなことを聞かせたくなかったと父は言いました。母自身にも余命は知らされなかったようです。最後に母にはしたいことがあったのではないか、僕は一度しか見舞いに行けなかったけど、余命を知っていたら1年休学しても付き添っていたかった。祖父母と父に裏切られた思いが強かったし、なにより母がかわいそうで……。あれから実家には一度も行っていません」

 祖父母も父も、今はもうこの世にはいない。3人の葬儀にも彼は顔を出さなかった。「あの家の長男は」と悪口を言われているだろうが、それでもかまわないと彼はきっぱり言った。姉とも父が亡くなってから5年、ほとんど連絡はとっていないそうだ。

「今の姓は妻のものです。結婚するとき妻の姓を選択しました」

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