「妙に元気過ぎた」 プーチンの120分インタビューの狙いとは?

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 2月8日に公開されたプーチン大統領のインタビュー動画が話題を呼んでいる。聞き手は米国人ジャーナリストのタッカー・カールソン。トランプ前大統領と近いといわれる人物だ。インタビューは約2時間にも及ぶが、主な内容は次の六つ。

 1、歴史的にウクライナ人はロシア民族の一部である。今のウクライナは旧ソ連によって作られた人工国家であり、正統性はない。

 2、ソ連崩壊後、ロシアはアメリカに歩み寄ろうとしたが、拒絶された。それどころかNATOがウクライナまで拡大してきた。

 3、ドンバス地方で起きた紛争は2014年に停戦合意したが、それを破って戦争を続けているのがウクライナだ。いまロシアが行っていること(22年2月からの侵攻)は、この戦争を終わらせる試みである。

 4、ウクライナ政権はネオナチを信奉している。彼らが英雄視しているのはナチスの協力者でロシア人虐殺に手を染めた人物。ナチスと戦ったロシアがこれを見逃すわけにはいかない。

 5、ノルドストリーム(ガスパイプライン)を破壊した犯人は、これを実行できる者だ。そしてCIAにアリバイはない。

 6、アメリカが戦争を支援しており、ゼレンスキー大統領はその指示下にある。しかし、彼は国家元首なのだから、決断して交渉に入ろうではないか。

「エリート層を引き付ける狙い」

 新しいことは何も言っていないのだが、巷間指摘されたような重病という雰囲気はなく、妙に元気過ぎるほど。このタイミングでのロングインタビューをどう見るべきか。拓殖大学特任教授の名越健郎氏が言う。

「考えられるのは、3月17日に行われるロシア大統領選挙に向けた国内向けのアピールです。“停戦の準備がある”というメッセージを強調することで、動揺しているエリート層を引き付ける狙いがあるのでしょう。そして、今秋に大統領選を控えるアメリカの共和党に向けたものでもある。政府が抱える33兆ドルにものぼる債務を指摘し、武器供与の停止はアメリカの国益にかなうというメッセージです」

 ワシントン・ポストなど西側メディアはインタビューを大批判したが、YouTubeでの動画再生数は1560万回に上った。自由主義陣営の隙を突いてきたプーチン大統領、次はどんな手で揺さぶりを仕掛けてくるのだろうか。

週刊新潮 2024年2月22日号掲載

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