日本のサル真似が4月危機を呼ぶ? 尹錫悦政権、総選挙目前に株もテコ入れ

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株価を下げたいオーナーばかり

――「動機不純で稚拙」ですか……。

鈴置:ただ、そのおかげで、韓国経済の宿痾ともいうべき欠点――財閥オーナーの専横が議論の俎上に上りました。

 左派系紙、ハンギョレは「『コリアディスカウントは上場企業のガバナンスが原因』…日本の市場改善の理由は」(1月22日、日本語版)で「商法改正を通じて、取締役の忠実義務の対象に会社はもちろん『株主の比例的利益』も加えなければならない」と主張しました。

「株主の比例的利益」とは「オーナーだけが株主の権利を行使できる」韓国の現実を踏まえ「少数株主だって株主だ。一般投資家の権利も保障せよ」との意味です。

 特に問題になるのは株価です。韓国の上場会社の多くが同族会社。低コストで子供に経営権を譲るために、オーナーには株価を低く抑えようとの動機が働きます。取締役会が阻止しようにも、韓国の取締役は「上司」である会長=オーナーの言いなりが普通です。そこで株価を上げるには、取締役に一般株主への忠実義務も持たせよう――との主張が出てくるわけです。

 保守系紙の朝鮮日報も同様の主張をしました。社説「連日、最高値の米日の証券市場、支配構造を改善してこそ韓国市場も評価を得られる」(1月24日、韓国語版)です。ポイントを訳します。

・韓国証券市場の不振の根本的理由は、不透明な企業統治構造により、少額株主が阻害されているからだ。社外取締役は賛成の手を挙げる役割に徹しオーナーや経営陣の利益に合わせるばかりで、少額株主は犠牲となる。
・高い相続税、贈与税のためにオーナーは安い株価を好み、配当にも極めて渋い。このように収益性の低い韓国株に海外の投資家はもちろん、[韓国の]個人投資家も短期の差益狙いの投資に傾く。
・政府が空売りの一時的な禁止、金融投資所得税の廃止、大株主の株式譲渡税の緩和など、株価対策を発表したが、企業支配構造の画期的な改善なしでは一時しのぎに終わるだろう。

一般投資家はゴミ扱い

――株価を下げたいオーナーが世の中に存在するのですね……。

鈴置:私も、韓国の上場企業は時価発行増資の前に敢えて悪い材料をリークして株価を下げるのが通例、と知って驚いたことがあります。ソウルに赴任した1987年のことです。韓国の証券会社の幹部、Kさんとの当時の会話が以下です。

鈴置:なぜ、時価発行前に株価を下げるのでしょうか?
K氏:オーナーの持ち株比率を維持するためです。株価が高ければ、オーナーはその分、余計に払いこまねばなりませんからね。
鈴置:でも、それは会社――引いては株主に対する忠実義務違反になりませんか?会社が本来、増資により払い込んで貰えるおカネを自ら減らしているのですから。
K氏:株主?ああ、少額株主のことですか。彼らだって低コストで新たな株が買えるのでハッピーなのです。「会社が得べかりし利益を失っている」といえばその通りですが、文句を言う人はどこにもいません。

 この会話から分かるように、韓国で「株主」と言えば、上場企業であってもオーナーを指します。一般の投資家は「少額株主」と呼ばれ一人前の株主と見なされない。ゴミ扱いです。

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