ソフトバンクを戦力外になり、ヤクルトへ移籍…“24歳の元気印”増田珠を直撃 「このチームは、僕がやりたいことを応援してくれるんです。やりますよ。見ててください」

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ドラフト2日後の「戦力外通告」

 そうした状況下で、ソフトバンクは昨秋ドラフトの3位指名で、慶大のスラッガー・広瀬隆太を獲得。東京六大学通算20本塁打を誇る和製大砲候補で、しかもポジションは一塁と二塁。増田とそれこそ“かぶる人材”が新たに入ってくる。こうなると、プロの世界とは残酷なものだ。ドラフトから2日後、増田は球団から「戦力外通告」を受けた。

 しかし、捨てる神あれば拾う神ありだ。

 ヤクルトは今季、支配下・育成総勢74人でスタートしている。一方のソフトバンクは119人。この「少数精鋭型」ゆえに、増田の生きる道が出てくる。

 山田哲人は高卒1年目の2011年、クライマックスシリーズが1軍デビュー。村上宗隆は1年目からファームで4番を打ち続けた。将来を見据え、適性ポジションにはめ込み、実戦で育てていくというのがヤクルト型の育成法だ。

 この育成のサイクルがうまくハマらなければチームが低迷するリスクはあるが、山田が初の3割、30本塁打、30盗塁以上の「トリプルスリー」を達成した2015年、村上宗隆が初の本塁打王に輝いた2021年は日本一、さらに村上が三冠王を獲得した2022年はリーグ連覇と、その狙い通りともいえる“中期サイクル”で優勝を果たしている。

「パームアップ」

 ただ、人数を見ても分かるように、選手層は明らかに薄い。だからこそ増田のような“何でもできる”人材が貴重になってくる。バッティング練習前にも、まず外野の守備位置に入ってボールを追う。打撃練習を終えての特守では三塁から始まり、二塁、一塁と3ポジション。そのパートナーは宮本丈、昨年12月の現役ドラフトで獲得した前巨人の北村拓己と増田の3人。勝ちゲームの逃げ切り態勢での守備固め、あるいはレギュラー陣を休ませる時のスタメンといったバックアップ要員として、すでに計算に入っているというわけだ。

「ヤクルト、超やりやすいです。先輩たちも本当に優しいし、声だって『どんどん出して』って言われましたし『よく聞こえるよ』って褒めてくれますしね」

 その躍動感は、ソフトバンク時代と変わらない。もう、それこそ移籍組とは思えないほどに、遠慮なく声を出し、ノックを受けている。打撃練習を見ようと、スタンドで待っていたら「喜瀬さん」と増田から大声で呼びかけられた。

「僕の成長ぶり、見てください。多分、印象全然違いますよ」

 その打球が、左中間方向に力強く飛んでいく。昨冬、米シアトルにある「ドライブライン」のスタッフたちが来日した際、増田もスイングをチェックしてもらい、ポイントを引き込んで打つための「パームアップ」のコンセプトを学んだという。

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