ソフトバンクを戦力外になり、ヤクルトへ移籍…“24歳の元気印”増田珠を直撃 「このチームは、僕がやりたいことを応援してくれるんです。やりますよ。見ててください」

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今キャンプは「1軍」扱いの浦添組

 どうしても気になる選手がいて、夜の飛行機で沖縄を立つ前に、ヤクルトがキャンプを張る浦添へ足を向けた。

 2月10日、第3クール初日。

 番記者経験のない球団のキャンプ地は、どうも勝手が分からない。練習の合間に声を掛けていいものなのか。つまらぬルール違反で、他の記者たちに迷惑をかけるのもそれこそ本意ではない。戸惑いながらも、背番号「63」が、メーングラウンドから球場外にある階段を使ったダッシュに向かうその道すがら、「マス君」と愛称で呼びかけてみた。

「うわっ、どうされたんですか?」

 増田珠は、相変わらずの明るい、笑顔いっぱいの表情で応えてくれた。昨オフ、ソフトバンクから「戦力外通告」を受けた24歳の“元気印”は、今季から新天地・ヤクルトで新たなスタートを切り、今キャンプは「1軍」扱いの浦添組に名を連ねている。

 この男の“クビ”は昨秋、博多のホークスファンを少々ざわつかせた。

 自らを「マスオ」と呼ぶのは、先輩・松田宣浩の代名詞「熱男」をもじったもの。右打ちの内野手登録で、かつては「熱男2世」の評判も取ったのは、そのプレースタイルはもちろん、グラウンドやベンチで元気に絶え間なく声を出す前向きな姿勢も先輩のマッチばり。故に、ホークスファンからも絶大な支持を得ていた。

 ただ、巨大戦力・ソフトバンクの中では、突出した力や、他に抜きん出た能力を発揮できなければ、1軍枠に入り込むのも難しい。名門・横浜高から2017年秋のドラフト3位でソフトバンクへ入団したが、昨季までの6年間で本塁打は2本。1軍でも通算52試合出場にとどまっていた。

「ソフトバンクでは、自分を“殺す”しかなかった」

 だからこそ生き残りをかけて、増田はあらゆるポジションにチャレンジした。横浜高時代は主にセンターだったが、プロ入り後は内野に挑戦。ウエスタン・リーグでも一昨年、昨年といずれも一塁、二塁、三塁、外野での試合出場を果たしている。

 打の方では横浜高時代の3年夏、神奈川大会では大会新記録となる4戦連発・5本塁打をマーク、2度出場した甲子園でも通算3試合、11打数5安打の打率.455をマークするなど、そのパンチ力には光るものがあった。

 しかし、繰り返しになるが、ソフトバンクにはライバルがひしめき合っている。同じ右打者の先輩なら、かつては内川聖一や松田宣浩がいて、後輩にも井上朋也、リチャード、正木智也と長打力を秘めた逸材たちが控えている。

「ソフトバンクでは、自分を“殺す”しかなかったんです。やっぱり、生き残らないといけなかったですから」

 増田は、だからこそ“つなぎ役”に活路を見いだそうとした。ボールを上から叩くように捉えて、逆方向の右へ流す。そうしたしぶといバッティングとともに、内外野ともにこなせるというマルチプレーヤーとして、1軍の枠に何としてもとどまろうとした。

 そうした献身的なプレーぶりと、明るい性格。ただ、マルチぶりというのは、ネガティブな捉え方をすると“器用貧乏”という言葉にも変わってしまう。つまり、シビアな言い方をすれば、どこか決め手がないというか、特筆すべきプレーの特徴が見えないのだ。

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