PGAツアーの発表にリブゴルフ会長は大慌て 統合話はどうなる?力関係に微妙な変化

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 1月31日の朝、PGAツアーのジェイ・モナハン会長がテレコンファレンス(遠隔会議)を開き、米コンソーシアムのSSG(ストラテジック・スポーツ・グループ)とパートナーシップを結んだと発表した。リブゴルフとの統合については、両者の合意が発表されてから大きな進展は見られない。今後どうなるのか。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】

慌てた様子のリブゴルフ会長

 パートナーシップの締結により、PGAツアーはSSGから最大30億ドルの投資を受け、営利法人「PGAツアー・エンタープライズ」の創設に向けて動き出す。そして、一定条件を満たした約200名のPGAツアー選手が、株主となって経営に参加することになる。米メディアからの情報によると、モナハン会長からの発表を耳にした選手たちは「みな納得した表情で頷いていた」という。

 和やかに受け止められたこのテレコンファレンスとは対照的にひどく慌てた様子を見せたのは、リブゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」を率いるヤセル・ルマイヤン会長だった。

 ルマイヤン会長はリブゴルフ選手たちに向けて緊急声明を出し、「PIFは今後も将来的な投資の可能性などに関してPGAツアーとの討議を続けていく」と声を上げた。

 なぜルマイヤン会長は大慌てでそんな声明を出したのか。おそらく、リブゴルフ選手やその周囲が不安や疑問を覚えないよう予防線を張り、すでに首を傾げている人々の疑念を早急に払拭しなければという焦燥感に駆られたのではないだろうか。ルマイヤン会長があからさまに慌てた様子を見せたのは、リブゴルフが創設されて以来、初めてのことだ。

 そして、そんなルマイヤン会長の狼狽ぶりを傍目にした米ゴルフ界の人々は、「ひょっとすると、これはPGAツアーの大逆襲の始まりではないか?」と囁き始めている。

昨年6月に統合合意を発表

 ここ数年、世界のゴルフ界ではあまりにも多くのことが次々に起こり、少々混乱気味ではないか思うので、これまでの経緯をざっとおさらいしてみよう。

 潤沢なオイルマネーを擁するPIFを後ろ盾にして、2021年にグレッグ・ノーマンがリブゴルフを創設したとき、PGAツアーは「新参者のツアーに何ができる?」と言わんばかりに過小評価した。

 しかし、マネーパワーは想像以上だったようで、リブゴルフが2022年6月から試合を開催し始めると、PGAツアーのスター選手が次々に移籍。するとPGAツアーは焦り出し、「マネーにはマネー」で対抗しようとあの手この手で策を講じ始めた。

 だが、マネー合戦では歯が立たないことを悟ったPGAツアーのモナハン会長は、ほぼ独断でPIFのルマイヤン会長と水面下で交渉を開始。そして2023年6月、モナハン会長とルマイヤン会長は「統合合意」を電撃的に発表した。その内容には、PGAツアーがPIFからの投資を受けて営利法人「PGAツアー・エンタープライズ」を創設することや、その会長にルマイヤン会長が就き、その下にモナハン会長がCEOとして就任することなどが含まれていた。

 しかし、一方的に発表された内容にPGAツアー選手たちは激怒し、モナハン会長の信頼は一気に失墜。その後はPGAツアーの理事会が主体となってPIFや外部団体との討議や交渉を行なってきた。

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