不倫がバレて、妻は「あなたは汚らわしい」と言い放った…それでも「悪い気がしなかった」という45歳「マザコン夫」の家族観

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前編【母は「チビ太」とからかわれていたボクを救ってくれた…年上女性と何度も不倫を繰り返す45歳「マザコン夫」の原体験】からのつづき

 佐島慎吾さん(45歳・仮名=以下同)は自らも認める“マザコン”。妻がいても「女性の中に母を見て、母を探してしまう」と、年上女性との不倫をしてきた。優しく、強く、たくましかったという母は、彼が中学生のときに病で亡くなった。父は立ち直れず家庭は崩壊。慎吾さんは叔母の下で育てられ、勧められた見合い話で3歳年下の陽子さんと結婚、一男一女に恵まれた。

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 妻は子育てに専念していた。幼い子をふたり育てながら、家事も丁寧、料理も完璧な妻に、彼はときどき「すごいなあ。いつもありがとう」と伝えた。もっと手抜きすればいい、めんどうなときは店屋物でもかまわないと言っているのに、妻は毎日、手作りの料理をテーブルに並べた。

「生活費だけ渡すという形をとっていたんですが、妻が足りないと言ったことはありません。給料日近くに『大丈夫? 足りてる?』と聞くと『大丈夫よ』って。なんだかだんだん妻のけなげさで胸が苦しくなることがありました」

 彼は彼なりに貯金をし、ある程度、運用もしていた。リスク分散しながら資産を築いていたのだ。若いころからお金にはシビアな目をもっていた。叔母夫婦は大学の入学金は出してくれたが、それ以外はむずかしかった。奨学金を借りるとあとが大変だと思っていた彼は、別の親戚にお金を借り、あとはアルバイトでせっせと稼いでいた。それでもときにはキャベツ1個で1週間を過ごしたこともあるという。そんな苦労をしたからこそ、子どもたちのためにも妻のためにも資産を形成したかった。

「生活費以外の出費は言ってくれれば必ず出すからと妻には伝えていました」

 といいつつ、彼は小首を傾げた。

「今、言いながら思ったんですが、妻と僕ってかなり他人行儀かもしれない。ケンカしたこともないんですよ。ケンカの種がないから。妻はひとりで我慢しているのかもしれません。あるいはこんな距離感でいいと思っているのか……。子どもたちと一緒に食卓を囲むと子どもの話を聞くことばかりだし、少しリビングでくつろいだら、僕はほぼ自室にこもるので、考えたみたら妻とふたりきりでゆっくり話す時間はあまりとってないですね」

 妻がどう思っているかはわからない。ひとりの時間が必要だと思っている女性であれば、むしろこれでいいと感じているかもしれない。あるいは夫婦としてじっくり話せないことを寂しいと思っている可能性もある。いずれにしても「他人行儀」だと本人が認めるような夫婦関係はあまり一般的ではなさそうだ。

「料理教室」での出会い

 慎吾さんの「今の恋」は2年ほど前から始まった。出会いは「料理教室」だったというから興味深い。慎吾さんは、彼なりに家庭を愛している。だから子どもたちのため、妻のために料理を作ってあげたいと思うようになった。仕事から離れて気分を変える趣味をもちたいとも感じていたそうだ。

 土曜日の午後の料理教室は男性も女性もいて、社外の人と利害関係のない会話を交わすのは楽しみともなった。

「同じテーブルにいた智香子さんに惹かれました。温和な感じで、毎回、テーブルのまとめ役になってくれて。年齢も職業もバラバラですが、彼女がそれとなく気を配ってくれて、僕らのテーブルはいつも笑いが絶えなかった」

 3ヶ月の講習期間を楽しく過ごした慎吾さん、家庭で料理を再現すると妻も子どもたちも大喜びだった。あと2回で講習が終わるというとき、慎吾さんは智香子さんに「よかったら帰りにお茶でもしませんか」と声をかけた。帰りがけに待ち合わせの喫茶店の場所を伝え、先にその場所で待っていると彼女がやってきた。

「『あら、他の人は?』と彼女が言ったので、『ごめんなさい。僕だけです。僕があなたと話したかったんです』と正直に言いました。智香子さんががっかりしたのか喜んでいたのかわかりませんでした」

 料理上手そうに見える智香子さんがなぜ教室に来たのか、智香子さんのコミュニケーション能力の高さはどうやって培われたのかなど、世間話のようでいて彼女の本質を知る質問をいくつかしてみた。彼女は丁寧に答えてくれたという。

「結婚しているし子どももいるから、料理は長年やってきたけど、考えてみたら正しい基本を知らなかった。だから改めて学んでみたいと思ったと。コミュニケーション能力は高いとは思ってないけど、そう見えるとしたら人が好きなだけ、と爽やかに言うんです。屈託がないというか、物事をまっすぐに見ている人なんだなと感じました。そういう人間を、本来、僕はあまり好きではないはずなんですが、智香子さんにはなぜかぐいっと惹かれるものがありました。何より彼女は明るい。笑顔が心に染みる感じなんです」

 ベタ褒めである。彼自身は「明るいタイプではないし、偏屈で嫌なヤツ」だと自分を分析している。決して嫌なヤツではないが、どこかしらこだわりのある人間ではあるから、屈託のない人に惹かれることもあるだろう。むしろある程度の年齢になって初めて、「底抜けに明るくておおらかで屈託のない人」が好きになるのはわかる気もする。

「その日はお茶だけでさっと解散したんですが、料理教室の最終日に『これからも会う機会があるとうれしい』とこっそり伝えたら、彼女はLINEを交換しましょうと言ってくれました」

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