「セクシー田中さん」問題、自分事となると腰が引けるテレビ各社 有働アナと有名脚本家の言葉に共通点

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 昨年放送された人気ドラマ「セクシー田中さん」の原作者・芦原妃名子さんが1月29日に亡くなった事件の続報を、テレビが連日伝えている。とはいえ、当事者の日本テレビが、なぜ悲劇が起きたかの背景は詳しく伝えず「お悔やみ」を繰り返すばかりのため、視聴者には極めてわかりにくい構図になっている。

 芦原さんがSNSに投稿した内容を見る限り、終盤の2回(9話・10話)の脚本の書き直しが行われるなど、脚本家や日本テレビ側との間でトラブルがあったことは間違いない。テレビ各社の報道の内容を比較しながら、いまテレビドラマ、そしてテレビ局をめぐって、何が起きているのかを改めて検証したい。【水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授】

他人事ではいかない、漫画原作の人気ドラマ増加

 まず大前提として、テレビドラマ業界では、「漫画が原作」というケースは急増している。この10年ほどでも、「逃げるは恥だが役に立つ」「重版出来」「クロサギ」(いずれもTBS系)、「ギフテッド」「大奥」(ともにフジテレビ系)、「ゼイチョー~『払えない』にはワケがある~」(日テレ系)、「今日からヒットマン」(テレ朝系)、「正直不動産」(NHK)など、大ヒットとなったドラマの多くが漫画が原作だ。極端にいえば、いかに早く良い原作となる漫画を見つけ、他局に先駆け映像化の道筋をつけるか、という要素がプロデューサーの仕事の大きな部分を占める時代になっている。そうした中で「原作者」の権利というものが注目されるきっかけになったのが、今回の芦原さんの訃報だった。日テレのみならず各社にとっても“他人事”ではないのだ。

民放各社は、日テレのコメントを元に“第一報”を報道

 テレビの民放各社は、芦原さんが遺体で見つかった1月29日の夜のニュース番組や翌朝の情報番組で本件を報じた。TBS「news23」、日テレ「news zero」、テレ朝「グッド!モーニング」、フジテレビ「めざましテレビ」などだ。いずれも、脚本をめぐってトラブルがあったことを芦原さんがSNSで明かしていたことを伝え、日テレが発表したコメントを中心に報道していた。

日テレの発表は「芦原妃名子さんの訃報に接し、哀悼の意を表するとともに謹んでお悔やみ申し上げます」とし、ドラマについては「日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし放送しております。本作品の制作にご尽力いただいた芦原さんには感謝しております」というものだった。そして各社とも、精神的な辛さを抱えた人たち向けに厚生労働省がHPなどにまとめている相談窓口を併せて紹介するスタイルだった。

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