支持率リードで増す「もしトラ」の現実味 バイデン大統領の再選を阻む“最大要因”は何か

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バイデン氏の再選を左右するのは経済の行方

 バイデン政権の経済運営への批判がさらに高まる恐れも出ている。インフレ下で好調を支えた賃金の伸びに陰りが見えているからだ。

 米国ではハイテク業界の大量解雇が生じており、今年1月の人員削減数は既に1万人を超えている。パンデミック下のデジタル特需を見込んで人員を増やしすぎたことが災いしている(1月28日付日本経済新聞)。

 昨年冬のボーナスが落ち込んだのも気がかりだ。

 給与計算ソフト企業ガストが17日に発表した調査によれば、昨年12月に従業員に支払われたボーナス額は平均2145ドル(約32万円)となり、前年の水準を21%も下回った。減少は全業種で見られ、観光・運輸業界では36%減だった。この結果についてガストは「経営者は従業員の流出リスクよりも、景気の先行き懸念から手元資金を温存する傾向を強めている」とコメントしている。

 所得の伸びが減速すれば、頼みの綱の個人消費もあやうくなる。

 いずれにせよ、今後の経済の行方がバイデン氏の再選を左右することは間違いないが、気になるのはトランプ氏が放った不吉な発言だ。

「私はハーバード・フーバーになりたくない」

「バイデン政権の下で米経済は災厄に見舞われる」と主張し続けてきたトランプ氏は8日、「米経済の崩壊は今から12カ月以内に起こることを望む。私はハーバード・フーバーになりたくない」と語った。フーバー氏は1929年の株価暴落が引き金となった大恐慌が仇となり、1932年の大統領選挙で敗北している。

 トランプ氏の発言の意図は定かではないが、順風満帆に映る米国の金融市場が時限爆弾を抱えているのは事実だ。

 FRBは24日「銀行向け緊急融資制度のバンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)を予定通り3月11日に撤廃する」と発表した。BTFPは昨年3月、シリコンバレー銀行を始めとする地方銀行の連鎖破綻で広がった金融システム不安に対処する目的で導入されたが、FRBは「事態は収まった」と判断したようだ。

地銀の大量破綻は時限爆弾

 だが、筆者は「地銀の大量破綻はこれから本格化するのではないか」と警戒している。

 地銀は不調に陥っている商業用不動産向けに大量の貸し出しを行っており、昨年第3四半期末の債権規模は約2兆7000億ドル(約400兆円)に達しているからだ。

 米国のオフィス空室率は13%超と過去最高の水準にあり、今後も上昇することが確実視されている。オフィス向けローンの延滞率も6%を超えているが、地銀の損失が顕在化するのはローンの借り換えが本格化する今年後半以降だ。相次ぐデフォルトが致命傷となって破綻する地銀の数が、昨年3月を大きく上回るのではないかとの不安が頭をよぎる。

 地銀の大量破綻でリーマンショックのような金融危機は起きないかもしれないが、好調な米国経済に大きな打撃を与える可能性は高いだろう。

 バイデン政権の命運は、金融市場の時限爆弾(商業用不動産ローンの焦げ付きによる地銀の大量破綻)がいつ爆発するかにかかっているのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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