藤井聡太八冠が3連覇に王手 “地上波解説者デビュー”に「将棋小僧なんだな」

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最後に飛び跳ねた桂馬がとどめ

 翌日、立会人の福崎文吾九段(64)が開いた封じ手は、本田六段の予想通り飛車を止める「7三歩」。藤井が飛車を横に逃がすと、「5五歩」として攻撃を続ける。藤井は54分考えたが、「同歩」とせずに角を引いて馬を作った。菅井は3枚の歩を駆使して必死に攻めるが、ABEMAのAI(人工知能)の評価値を見る限りは勝率3割ほどからあまり好転していなかった。

 菅井は55手目に「5六角」とした。これは戻ってきた藤井の馬の上に角を乗っけるような形で、藤井の飛車と王に狙いを定めていた。終盤、菅井は角と飛車を手にしていたが、有効な打ち込み場所もなく、「8二金」だけではどう見ても攻め手が遠い。藤井は自陣の「8一」から「三段跳び」のように跳ねて「7七」に成り込ませた成桂を「6八」に寄せてきた。これを見た菅井が手をかざして投了したのが、午後4時41分だった。

想定しない展開

 勝った藤井は「(菅井の向かい飛車について)序盤はあまり想定していない展開になって。角が向かい合っている形での駒組になったので、そのあといろいろな展開が考えられて。一手一手、難しいところかなと思っていました」と振り返った。竜を自陣に引き揚げた局面については「自陣が安定しているので指しやすくなった」と言う。

 藤井はこれで王将戦3連覇と大山康晴十五世名人(1923~1992)の記録を抜くタイトル戦20連覇に王手をかけた。そのことについて問われても「そういったことは意識せずにのぞみたい」と話した。

 敗れた菅井は「(向かい飛車について)ずっと同じ戦型が続いていたので、違うことをやってみようかなと思いました」と打ち明け、「封じ手の少し前が大事なところなのですが、結局、判断がつかないまま指して、あまりよくない選択だったと思います。具体的には『4四角』(30手目)に『6六角』と合わせたあと、普通は先に『5八金左』と上がるのが形で、それがいちばんよかった気がします」などと残念そうに語っていた。

 ABEMAで2日目の解説をしていた深浦康市九段(51)は、「気分を変えて向かい飛車で臨んだ菅井さんですが、(守るべきところで)前に攻めた手が悔やまれる」として、やはり「5八金」とすべきだった場面をあげた。

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