ジブリの作戦勝ちか…アメリカ人には難解な「君たちはどう生きるか」がGG賞を受賞した特殊事情

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GG賞受賞は、ちあきなおみを真似た?

 1月7日に発表された米ゴールデングローブ賞(以下「GG賞」)で、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』(米題『The Boy and the Heron』=少年と青サギ)が、最優秀アニメーション映画賞を受賞した。GG賞は、3月に発表される米アカデミー賞の「前哨戦」ともいわれている。そのアカデミー賞でも、今年の長編アニメーション賞にノミネートされている。もし受賞となれば、宮崎監督は『千と千尋の神隠し』(2002年)、名誉賞(2014年)につづく3度目の受賞となる。

 南米コロンビアでは同作品の制作にかかわったと主張する女性アニメーターが、映画内で15分超に相当する2万5000枚分のイラストを作画したとして現地メディアのインタビューを受けた。しかし、GG賞受賞で再び作品に注目が集まると、彼女のクレジットがエンドロールにはないことが分かり、インタビューを報じた現地メディアは謝罪に追い込まれるという騒ぎになった。

『君たちは~』は日本では、昨年7月、宣伝も試写会も一切ないまま公開された。劇場パンフレットでさえ、公開から約1カ月後まで販売されなかった。そんな話題性もあり、公開第1週でこそ、週末観客動員で1位となったものの、2週目以降は2位、3位に落ち、第12週でランキング圏外に消えている。興行収入も24年1月時点で、累計87億円。邦画は興収40億円で大ヒットといわれるので、決して恥ずかしい数字ではないが、『千と千尋の神隠し』の317億円には遠くおよばない。

 ところが、北米では昨年12月8日の公開以来、爆発的な動員を記録しており、第1週だけで興行収入1280万ドル(約18億6000万円)を突破。週末興行ランキングで第1位となった。ジブリ作品としては、過去最高のヒットとなっており、外信記事によると「ニューメキシコ州の田舎町のミニ映画館でも上映」されているという。1月半ばの時点で、全世界で約1億6000万ドル(約235億円)の数字をたたき出している。

「12月8日に北米公開、3日後の11日にGG賞ノミネート。そして1月7日に正式受賞。まさに電光石火の進撃です。ディズニー100周年記念作品『ウィッシュ』や、カンヌのクロージング作品『マイ・エレメント』といった強敵を蹴散らし、たった1カ月でこの成果ですから驚きました」

 と語るのは、アメリカ映画界の事情に詳しい、芸能ジャーナリスト。

「これで思い出したのが、1972年の第14回日本レコード大賞です。この年は、4月発売でオリコン1位、日本歌謡大賞受賞の小柳ルミ子《瀬戸の花嫁》が大本命でした。ところが9月に突然発売された、ちあきなおみの《喝采》がさらって行ってしまった。レコ大対象期限の10月末直前に“異色作”をぶつけて、関係者に鮮烈な印象を与える――日本コロムビアの作戦勝ちといわれたものです。『君たちは~』もおなじ戦略のような気がしました」

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