実は公表されていた能登半島の地震リスク なぜ無視されたのか

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安全情報と誤解

 一方で、地震本部では「全国地震動予測地図」を公表。今後30年以内に全国各地で震度6弱以上の揺れが起きる確率を予測し、色分けしている。そこでは南海トラフ地震の危機が強調されて見える一方、

「石川県の大部分でその可能性は0.1~3%と分類されていました」(同)

 県はこれを根拠に、企業誘致のためのHPで「石川県の地震リスクは小さい」と宣伝していた。何ともお気楽な話である。

 縦割り行政の弊害に加え、地震本部の予測地図が過剰に強調された――さまざまな問題点が浮き彫りになる。

「この予測地図は、取り扱いによっては逆効果を招いてしまうんです」

 と述べるのは、名古屋大学減災連携研究センターの鷺谷威(さぎやたけし)教授(地殻変動学)。

「本来“危険なところがありますよ”ということを示す地図なのですが、実際には、専門家以外はそれを見て、色が薄いところに関する安全情報と誤解してしまっている。石川の企業誘致はその典型例です。地震の危険度を点数でつけるとすれば、日本はどこも高得点なのですが、予測地図はその中で90点と95点を明確に色分けしているようなもの。現在の受容のされ方は非常に危なっかしいですね」

 地震調査研究に付く予算は毎年50~70億円規模。組織への、シビアな検証が必要なのは言うまでもない。

週刊新潮 2024年2月1日号掲載

特集「『能登大地震』鳴りやまぬ哀哭」より

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