西村康稔氏の辞任報告にズッこけた あなたは「場合によっては逮捕される男」ではないのか(中川淳一郎)

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 自民党の「パーティ券問題」の渦中にあり、経済産業相を辞任した西村康稔氏が同省を去る様子をX(旧ツイッター)で報告したのですが、ズッこけました。4枚の写真は(1)花束を持ち、見送る職員をバックに笑顔で手を振る(2)同様に手を振り歩く。脇には拍手する職員(3)真剣にスピーチをする(4)スピーチ中一本締めをするかのようなポーズを取る、です。添えられた文章の一部にはこうあります。

〈1年4ヶ月にわたり私を支えてくれた職員の皆さんから、拍手と温かい言葉で見送られ、涙の出る思いでした。改革の道半ばで退任することとなり残念な思いですが、まずは捜査に協力し、しかるべき時がくれば、しっかりと説明責任を果たしたい〉

 おい、この写真と文章さ、人望があり、大活躍によりさらなる高みが期待される大臣が内閣改造で円満任期満了を迎えたようなものだろ! あと、「今」説明せぇ! いいですか、貴殿は「政治資金規正法違反疑惑により辞任した男」であり、「場合によっては逮捕される男」なの!

 この次の投稿では、ASEAN各国の大臣と楽しそうなディナーの様子を投稿。そこに添えた言葉は「しばらく会えなくなることの別れを惜しみました」とある。「しばらく」ってまた経産相に復帰するつもりか?

 12月2日、万博会場視察時の会見で自身の政治団体では「適正に処理している」と言っていたのに辞任ってヘンでしょうよ。この人、本当に後先考えない人なのでしょうね。菅義偉内閣時代は新型コロナウイルス感染症対策担当大臣でしたが、とんでもないことを言いだした。端的に言うと、こうです。

〈休業要請に応じない店舗に対しては、金融機関に働きかけてカネを貸さないようにする〉

 こんな強権ありますか? 野党はこの暴言を批判し、菅首相は「承知していない」と突き放し、結局西村氏が撤回することとなりました。

 そしてこの男の空気の読めなさが徹底的に露呈したのが、同氏の著書『コロナとの死闘』(幻冬舎・2022年)です。書評を書くべく仕方なく読んだのですが、ツッコミどころの連発で、人生でもっとも苦痛な読書体験でした。アメリカの高校時代に英語の小説を読まされたのよりもツラかったです。

 飲食店を問題視したのは、(1)マスクナシの会話がある(2)特に大人数、長時間の酒を伴う会合は大声になる可能性がありリスクが高い(3)5人以上だとリスクが高まる(4)5人以上だとクラスターになる可能性が高いとのデータもある、などが影響したのでしょう。

 で、新型コロナウイルスは今も存在しますが、マスクして4人以内で短時間の忘年会を心がけている人っています? 西村さんだってASEANの大臣とノーマスクで大宴会やったでしょうよ。

 とにかく、ヒド過ぎる本なのですよ。当時の自分がいかに頑張ったか、を振り返り、現在多数の人が苦痛にあえぐワクチン後遺症(ワクチン薬害)にも言及せず。

 今は自身の政治資金の不正については「適正に処理している」ですって。経産省をにこやかに去った様子を含め、これくらい鈍感な方でないと大臣なんてなれないんだな、と思いました。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2024年1月4・11日号掲載

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