お茶は「最先端の健康飲料」だった! がんの成長、転移を予防…日本茶に豊富な成分「テアニン」とは

ドクター新潮 ライフ

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ストレスによる脳の萎縮を軽減

 すでに研究されつくした感のあるカテキンやカフェインに対して、まだまだ未知の領域も多い「テアニン」。だが、その実力の一端は動物実験により明らかにされつつあるという。

「強いストレスにさらされると脳が萎縮する場合があるのですが、テアニンのリラックス効果はこの脳の萎縮を軽減することが動物実験で確かめられています。また、ストレスを与えたマウスは一般に寿命が短くなるのですが、テアニンを投与したところ、平均的なマウスと同じ水準まで寿命が延びたという結果も報告されています」(同)

 ストレスも軽減し、寿命も伸ばす。こうなれば、いよいよ“魔法のドリンク”に見えてくるが、気になるのは「お茶ならば何でもよいのか」という点だろう。

 ご存じの方も多いだろうが、緑茶も烏龍茶も紅茶も元は同じ。これらのお茶は全て「茶の樹」という常緑樹から作られている。

 中村氏いわく、

「茶の樹は葉の小さい中国種と葉の大きいアッサム種に分類されますが、含まれる成分に大きな違いはなく、生産地によって変わることもありません。緑茶や烏龍茶、紅茶の違いは、主に発酵の有無や度合いによるもの。お茶の世界では、茶葉をしおれさせたり、もむことで細胞を壊したりして酸化を促進することを“発酵”と呼びますが、茶葉の酸化は熱を加えることで止められる。この発酵を止めるタイミングによってお茶の色や味、香りに変化が出るのです」

 具体的には、茶葉を蒸すことで酸化を止める「不発酵茶」と呼ばれるのが、日本の煎茶や玉露、番茶、抹茶などのいわゆる緑茶である。ちなみにほうじ茶は煎茶や番茶を焙煎したもので、緑茶に分類される。

 一方、中国の烏龍茶などは少しだけ発酵させる「半発酵茶」。紅茶は完全に発酵させる「発酵茶」だ。

テアニンが多いのは日本の抹茶

 発酵の度合いはお茶の色や香りにも影響を与えるが、

「重要なのは、お茶を酸化させるとカテキン同士が結合するということです。つまり不発酵茶である日本の緑茶にはカテキンが豊富に含まれる一方、発酵茶である紅茶はカテキン同士が結合して別の物質に変わってしまうので、カテキンはほとんど含まれません」(同)

 ここまで見てきた通り、お茶の健康効果の大部分はカテキンによるもの。烏龍茶や紅茶にはこれらの健康効果は望めないのだろうか。

 だが、中村氏は、

「それが、そうとも言い切れないんです。カテキンが複数結合して別の物質に変わってもカテキンの良いところは失われませんから、場合によっては緑茶より強力な効果を得られる可能性もある。ただ、カテキンが結合した結果、どの成分が有効なのかを判別しにくいだけ、ともいえるのです」

 では、リラックス効果をもたらすテアニンはどうか。テアニンの含有量は葉への日光の照射程度によっても変わるという。

「日本の緑茶のうち、煎茶や番茶は日光を遮らずに育てるのですが、抹茶や玉露といった高級茶は新芽が2、3枚開き始めた頃にワラなどで太陽光を遮る被覆栽培を行うんです。こうすることによってテアニンが生成され、旨味が増すため、玉露や抹茶はほんのり甘い味になる。現在、世界で飲まれている緑茶の9割は中国産といわれていますが、中国産のお茶は手間のかかる被覆栽培を行いません。世界中の抹茶を買い集めて比較しましたが、テアニンが最も含まれていたのは日本の高級抹茶でした」(同)

 もっとも、テアニンと違って、カテキンは日光を照射しなければ豊富に生成されない。そこで、効果を高めるためには、自らの用途に応じて複数の種類を組み合わせるのが良いのだそう。

「例えば、玉露はその甘みを味わうために50~60度で入れるのが良いとされます。これくらいの温度でもテアニンは十分抽出されますが、カテキンやカフェインは熱湯で入れる方が多く抽出される。従って、空腹時や夜寝る前などは玉露など、ぬるま湯で入れたお茶を飲むのが良いでしょう」(同)

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