ロシア軍は31万人の戦死者を出してもまだ余裕…貧困ネパール人も雇う、えげつない兵集め【24年のウクライナ戦争を占う】

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傭兵を集めるロシア軍

 ところが、である。日本経済新聞(電子版)は12月20日、「ロシア、侵攻長期化視野に兵力増強 ウクライナに62万人」との記事を配信した。

 記事によると、ウクライナに展開しているロシア軍の兵力は何と約62万人。《動員による兵士は24万4000人。主力は、「志願兵」として参戦した契約軍人や民間軍事会社の戦闘員などが占めるとみられる》と伝えた。

 要するに、ウクライナ軍がロシア軍をいくら撃破しても、次から次へと新しいロシア兵が攻めてくるというわけだ。おまけにロシアは、かなり乱暴な手段を使って兵士を集めている。

「ネパールの警察は12月6日、失業中の若者から1人あたり最大9000ドルを徴収してロシアへの密入国をサポートし、ロシア軍に入隊させたとの疑いで10人を拘束したと発表しました。また、ネパール政府は約200人の国民がロシア軍に加わった可能性があるとし、そのうちの6人の戦死を確認しました。密入国の背景には、若者の貧困があります。ロシア軍が払う数カ月分の給与は、彼らの数年分の収入にあたるそうです。ロシアはネパールだけでなくウズベキスタンやソマリアでも傭兵を集めていることが判明しています」(同・記者)

痛かった反攻作戦の失敗

 これに対抗するためには──大統領も総司令官も“醜態”を見せてしまったが──確かにウクライナ軍も追加動員の必要があるのかもしれない。軍事ジャーナリストは「ロシア軍が人海戦術を採用しているのは明らかですが、現代の戦争でこんなことが行われるとは驚きを禁じ得ません」と言う。

「朝鮮戦争にはソ連の軍事アドバイスを受けた中国人民義勇軍が参戦しました。しかし、あまりにも損耗がひどく、人民解放軍の幹部が『今後は二度とソ連の軍事作戦は参考にしない』と決めたというエピソードがあるほどです。味方の損害を無視して突き進むというのは、確かにロシア軍の伝統的な“軍事ドクトリン(基本原則)”なのでしょう。ただ、ウクライナ軍を相手に人海戦術が実施できているのは、ロシア経済が意外に持ちこたえていることも大きいと思います」

 経済制裁を科しているとはいえ、依然としてEU(欧州連合)はロシア産のLNG(液化天然ガス)を購入している。ロシアに“日銭”が入っているのだから、高額の報酬を示して傭兵を集めることも可能だろう。

「一方のウクライナ側は、やはり昨年6月の反攻作戦が失敗に終わったことが痛かったようです。結局のところNATO加盟国の軍事支援の足並みが揃うことはなく、ウクライナ軍は不完全な陣容で突撃したため、たちまちロシア軍の反撃に遭いました。今では榴弾砲の砲弾も不足しているという報道もあるほどです。さらに、ゼレンスキー大統領が『ウクライナ全土の奪還』を掲げているのも、やはり非現実的だと言わざるを得ません」(同・軍事ジャーナリスト)

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