【ミャンマー】「1027作戦」で特殊詐欺グループを摘発 あまりに多かった“闇バイト”1万人の実態
特殊詐欺グループの摘発…中国は動けない
そこで1027作戦に結びついていく。この作戦を動かしたのは、以前から兄弟同盟を結んでいたMNDAA(ミャンマー民族民主同盟軍)、TNLA(タアン民族解放軍)、AA(アラカン軍)だった。MNDAAはコーカン族の軍事組織である。そこには少数民族の連合軍と中国、それぞれの思惑があった。
──少数民族の連合軍は、国軍を攻撃すると同時に、特殊詐欺グループを摘発する。そうすれば、国軍が中国に協力を依頼しても、中国は動けないはずだ。
戦闘で中心的な役割を担ったのは、コーカン族の軍隊であるMNDAAといわれる。見方を変えれば、1027作戦はコーカン族の内部抗争でもあった。
少数民族連合軍は次々に国軍基地を占拠。そして特殊詐欺グループにも圧力をかける。特殊詐欺グループをミャンマーに誘導し、国軍にすり寄っていったコーカン族にはいくつかのグループがあった。彼らは少数民族連合軍の攻勢のなかで逃亡。リーダーのひとりだった明学昌はピストルで自らの命を絶った。
救出された「闇バイト」の若者たち
その結果、闇バイトに携わったアジアの若者たちは、現地にとり残されることになってしまった。食べ物すらない窮状に追い込まれた彼らは、本国に送還されれば逮捕される可能性が高いとわかりながらも救出を願い出た。各国政府は救出部隊を派遣することになるが、そこでわかってくるのが、闇バイトの若者たちのあまりの多さだった。
マレーシア政府は127人を救出。
中国政府は88人を救出。
ベトナム政府は338人を救出したが、まだ500人以上がミャンマー内に残留。
公表された人数だけでこれだけになる。現地報道では、これは氷山の一角にすぎず、実際は1万人を超える闇バイト組がいるのではないかといわれている。
なお、そのなかに日本人がいたという報告はない。特殊詐欺グループが行っていたのは中国人富裕層への詐欺が中心だった。言葉の障壁があり、闇バイトの募集は日本をはずした可能性が高い。
クーデターのあだ花のように咲いたラオカイの特殊詐欺グループの拠点は、一掃されたかに見える。しかし現地では、残党がまた新たな拠点をミャンマー内につくろうとしていると噂されている。