「新年かくし芸大会」に「平成あっぱれテレビ」…お正月の「おせち番組」はなぜ激減したのか

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完全定着はフジの「のだめ」から

 新たに番組をつくり、制作費をかけるからこそ、スポンサーから高額のCM料金が受け取れる。再放送は制作費がゼロなので、高いCM料金を取れない。すると、利益も上がらない。だから売上高トップの日テレは1990代から再放送を一切やらないのだ。

 実はTVerの儲けが限定的である理由も同じ。地上波のスポンサーが制作費込みのCM料金を払ってつくった番組を流すから、TVerのインストリーム広告は高額の料金が取れない。

 フジは2008年の正月、上野樹里(37)と玉木宏(43)のダブル主演作「のだめカンタービレSP」を4日連続で放送。1月2日と3日は2006年秋に放送済みのドラマを一挙放送。同4、5日は新作「新春スペシャル IN ヨーロッパ」(午後9時3分)を流した。

 これが成功を収め、一挙放送は民放界に完全に定着した。一挙放送で視聴率が獲れたら、当たるかどうか分からない新規の特番をつくるよりいい。他局も追従した。

拡大版と一挙放送の増加は続く

 今年はTBSが夏ドラマ「VIVANT 一挙放送SP」を大晦日と正月の1月2日に放送する。タイトルに「SP」と入っているところがミソである。再編集が施されていたり、出演陣が登場したりするのだろう。やはり再放送ではない。

 同局は今年の春ドラマ「ラストマン-全盲の捜査官-」も1月2日と3日の深夜に一挙放送する。15分の未公開映像を含めたディレクターズカット版となるから、これも再放送ではない。

 正月ではないが、日テレも今年の冬ドラマ「ブラッシュアップライフ」を12月28、29日に一挙放送した。日テレは箱根駅伝を1月2日と3日の日中に放送するため、正月の一挙放送がやりにくいのだ。

 フジは1月2日と3日の日中に2006年版の「Dr.コトー診療所 2006」を一挙放送し、同日午後9時から映画版「Dr.コトー診療所」(2022年)を流す。一挙放送と新作、あるいは映画との組み合わせはフジの必勝パターンである。

 正月は通常番組の拡大版と一挙放送が増える一方。この流れは止まる気配がない。いくら普段より制作費が高いとはいえ、民放は低成長期。さほど多くない予算で高視聴率が獲れたら、それに越したことはないからだ。

 おせち番組という言葉が完全に消える日も、そう遠いことではないかも知れない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。放送批評懇談会出版編集委員。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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