「新年かくし芸大会」に「平成あっぱれテレビ」…お正月の「おせち番組」はなぜ激減したのか

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芸達者タレントの登場、好みの多様化

「かくし芸大会」の視聴率が目に見えて落ち始めたのは2000年代に入ってから。マンネリも理由だろうが、それより大きかったのは多くの芸能人がマルチタレント化し、本業とかくし芸の境界線が消えたことに違いない。

 例えば今なら俳優の森川葵(28)がいる。中京テレビが制作する日テレ系「それって!?実際どうなの課」(水曜午後11時59分)で、難易度が極めて高いカード投げやフォーク曲げなどを次々と成功させた。森川のような人が現れると、かくし芸で視聴者を惹きつけるのは難しい。

 子供から高齢者にまで幅広い層に知名度があり、愛されるタレントが激減したことも衰退の理由にほかならない。ザ・ドリフターズや沢田研二、堺正章(77)らに続く番組の顔が出てこなかった。背景にはタレントに対する好みの多様化もある。

 最後の「かくし芸」となった2010年元日の放送は世帯視聴率が9.2%。同じ日に放送されたテレ朝「相棒 season8元日SP『特命係、西へ!』」は17.8%。さらに同3日放送の日テレ「行列のできる法律相談所SP」は22.5%。民放界の流れがおせち番組から通常番組の拡大へと大きく傾いたのも無理はない。

「(通常番組の拡大は)視聴率がある程度、読める上、普段の番組づくりのノウハウが生かせるところがいい」(TBS制作マン)

新たなドル箱、ドラマの一挙放送

「かくし芸」が消える数年前、民放にとって通常番組の拡大版と同じくらいに魅力的な正月特番が出現した。放送済み連続ドラマの一挙放送だ。これが人気を博すようになったため、三が日の日中のおせち番組が激減した。

 ややこしいのだが、一挙放送と再放送は異なる。編集や出演陣のインタビューなどが加えられたら、もう再放送ではない。三が日の放送は全て再放送ではなく一挙放送と見ていい。

 一挙放送のパイオニアはフジ「WATER BOYS」。リアルタイム放送は2003年7月からの3カ月で、一挙放送は翌2004年の1月2日と3日の日中に行われた。

 リアルタイム放送でも全話平均世帯視聴率が16.0%に達した人気作だったが、全ての視聴者が観ていたわけではない。また、もう一度観たい人もいたため、一挙放送も高い視聴率を記録した。

 この一挙放送には出演陣の一部が出演。これで完全に再放送ではなくなった。民放は再放送をなるべく避けたいのである。再放送だと、いくら視聴率を稼ごうが、CM料金が安くなってしまうからだ。

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