大谷翔平「移籍」の経済効果は533億円 獲得に失敗したブルージェイズの大きな落胆

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ブルージェイズが大谷を狙った理由

 米ロサンゼルスは今、「大谷バブル」で沸いている。前オリックス・山本由伸(25)の加入も決まり、日本のファンも来季はドジャース戦中継に釘付けとなるだろう。大谷のドジャース移籍でもたらされる経済効果は約533億5200万円との研究・調査報告もある(関西大学の宮本勝浩名誉教授)。獲得に失敗したトロント・ブルージェイズからは、ため息ばかりが聞こえてきそうだ。

「大谷の契約は『10年7億ドル(約1015億円)』でまとまりました。予想されていたとはいえ、最終的に交渉途中で契約金が釣り上がりました。それはブルージェイズが交渉に参入してきたからですが、まさかここまで高騰するとは」(米国人ライター)

 ブルージェイズは77年創立で、カナダ国内に本拠地を構える唯一のメジャー球団だ。2回のワールドシリーズ制覇を果たしているが、今季はア・リーグ東地区3位。ワイルドカードにより、2年連続でポストシーズンマッチに進んだが、投手陣には若手が多く、これからのチームといった印象である。

「若い選手が多いということは育成に力を入れているということ。これまで、大型補強はしてこなかったチームです」(前出・同)

 大谷争奪戦においても、マスコミや関係者の間ではノーマークに近かった。しかし、補強費は十分すぎるほど持っていた。チームの主要オーナーは総合メディア企業の「ロジャーズ・コミュニケーションズ」である。

 ウインターミーティング直前の12月1日(現地時間)、通算65勝、158セーブを挙げた解説者のダン・プリーサック氏は、米放送局MLBネットワークに生出演し、ブルージェイズをこう紹介している。

「実は、金持ち球団なんだ。カナダで唯一のメジャー球団だから、本拠地のトロントだけでなく、バンクーバーなど、カナダ全土のファンがバックについている。主要オーナーのロジャーズ・コミュニケーションズは、大谷を最高の宣伝材料と捉えていて、野球だけではなく、グローバルな象徴として彼を使っていこうとしている」

NHLを切ってでも大谷が欲しかった

 ブルージェイズの地元紙トロント・サンが、ロジャーズ社が大谷争奪戦に本気で参入した背景をこう伝えている。

<ロジャーズ・コミュニケーションズが、カナダ国内で独占契約していたプロホッケーリーグ・NHLとの契約を延長しない旨を通達していた。NHLと交わした12年総額52億ドルの長期契約はあと2年残っていて、10億ドルを支払わなければならないが、それがなくなる3年後には黒字に転じる。10年間、NHL中継で垂れ流してきた赤字に比べれば、大谷の年俸はなんでもない>

 NHLとの契約更新の話し合いと、大谷のFAが時期的に重なり、ロジャーズ社はNHL中継を切ってまで、大谷を獲得したいと思っていた。

 さらに、同社の傘下にはブルージェイズの試合を中継するロジャーズ・スポーツネット社がある。大谷を獲得すれば、国際的な人気と視聴者も見込めると判断されたという。

「3月から10月にかけ、オープン戦、公式戦、ポストシーズンゲームで、トータル500時間以上のブルージェイズ戦を放送しています。広告収益や、日本企業からのスポンサーシップなども見込め、改装したばかりの本拠地球場、ロジャーズ・センターの高額プレミアムシートも売れるとの計算もありました」(現地記者)

 これまでロジャーズ社はブルージェイズのことにはあまり口出しをして来なかった。スポーツ事業のメインをNHLと位置づけていたからだが、大谷獲得に成功していたら、事業展開も大きく変わっていたはずだ。

「経済誌フォーブスが23年1月に調査・発表したアメリカ4大スポーツ(バスケ、野球、アメフト、アイスホッケー)の22年総収入によれば、各競技とも回復傾向にありましたが、MLBは42.3%増の108億ドル(約1兆4250万円)だったのに対し、NHLは30億ドル台でした。もともと、NHLは30億ドルから40億ドル台前半の数値で推移していましたが、近年は低迷傾向にあります」(前出・同)

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