「岸田政権」ジリ貧でも、なぜ株高は続くのか? ドイツ銀行が「日本円はリラやペソと同じ」と指摘した本当のワケ

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 自民党派閥による政治資金パーティーをめぐる「裏金」疑獄は、岸田政権を“死に体”へと追いやっている。しかし、そんな大騒動に一切の関心を示していないのが、国内外の機関投資家やマーケット関係者という。その理由を聞くと、「岸田不況」どころの話ではない、急速に存在感を失いつつある日本の寒々しい現状が浮き彫りになった。

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 東京地検特捜部が斬り込んだ裏金問題で、永田町は混乱の極みにある。しかし機関投資家やマーケット関係者の間で「どうなる岸田政権?」といった話題が出ることは皆無という。「インフィニティ」チーフエコノミストの田代秀敏氏が言う。

「現在、機関投資家やマーケット関係者が注視しているのは岸田政権の動向などではなく、日銀の金利政策の行方を示唆する植田和男総裁の発言です。岸田政権が何をしようと、株価などに影響を与えるインパクトは望めず、“何も期待していないから、何の関心もない”というのが彼らの本音です」

 別の証券会社関係者もこう話す。

「日経平均株価は今年5月以降、上昇基調を維持し、11月には1990年3月以来となる3万3853円の値をつけました。一方の岸田首相についていえば、株の値動きと反比例するようにマーケット関係者の関心の対象から外れていきました。そもそも就任時に『新しい資本主義』などと意味不明な概念を唱え出したところから“この総理に経済センスはない”と皆が感じ、その後の主だった経済政策も支持率目当ての内向きなものばかり。岸田政権になって以降、政治が市場に直接的な影響を及ぼす機会はめっきり減りました」

政治と経済が“リンク”した時代

 過去と比較した際、岸田政権の「投資業界からの総スカン」ぶりは際立っているという。

「12年11月14日、民主党の野田佳彦首相(当時)と故・安倍晋三氏が党首討論を行い、野田氏はその場で『16日に解散をします』と衆院解散を宣言した。すると16日に〈BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)〉という造語の生みの親であるゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長のジム・オニール氏が『We want Abe(安倍政権を待望する)』と題する投資家向けニュース・レターを発表しました」(田代氏)

 その中でオニール氏は「アベが“無理やりにでも3%のインフレ・ターゲットを達成させる”という。これこそ、多くの人々が1990年代から“日本が取るべき政策だ”とアドバイスしてきたものだ」と述べ、投資家に「円売り」と「日本株買い」を推奨。結果、政策が実施される前に「アベノミクス相場」が動き始めたのは有名な話だ。

「ただし、日本の政治と経済(相場や株式市場)が“両輪”のように噛み合いリンクしていたのは、この安倍政権初期の頃までです。年々、市場関係者の間から“政治に期待”する声は減り、いまでは経済に新しい活力を吹き込むような、政治主導のイノベーションが起きる可能性など誰も信じていません」(田代氏)

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