りゅうちぇるさんの報道にあった「いのち電話」の意味とは マスコミと自殺の関係性

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 最近、自殺にまつわる記事の末尾に「いのちの電話」などの相談窓口の連絡先が記載されることが増えた。これは、WHO(世界保健機関)の「自殺報道ガイドライン」に則ったものだが、果たしてどのような意味や効果があるのだろうか。『ウツパン―消えてしまいたくて、たまらない―』(著・有賀、新潮社刊)の監修者の1人で、自殺に関する研究を専門とする和光大学教授で臨床心理士・公認心理師の末木新氏(臨床心理学)にマスコミ報道と自殺の関係について聞いた。

「ウェルテル効果」を防ぐ

 今年7月12日にタレントのりゅうちぇるさんが亡くなった時には、ほとんどのネット記事に悩み相談の窓口についての案内が記載されたことが記憶に新しい。

「コロナ禍あたりから、メディアの自殺報道に変化が見られたと感じます。ネットの記事だけでなく、テレビでも自殺に関する内容を扱う場合には相談窓口を併せて案内するのが当たり前になってきました」(末木教授、以下同)

 メディアによる自殺報道の後に自殺が増加する危険性が高いことは、古くから知られている。

「1774年にゲーテの小説『若きウェルテルの悩み』が出版された後、主人公と同様の方法で自殺する若者が増えました。これに由来し、メディアの報道によって自殺者が増えることは、『ウェルテル効果』という名前で1970年代頃から明らかになっている事象です。1987年には、オーストリアで後追い自殺を防ぐための自殺報道のガイドラインが制定されました。ウィーンでは、地下鉄の飛び込み自殺を新聞が報道したことで、同じように地下鉄に身を投じる人々が急増しましたが、記事の文字数、美化する内容の割合などを減らしたことによって、自殺者数は劇的に減少したことが明らかになっています」

 日本でも、報道と自殺者の増加の関係は確認されている。

「1986年にアイドルの岡田有希子さんが所属事務所のビルから身を投げ、18歳で自ら命を絶ちました。新聞やテレビで岡田さんの死が繰り返し報道され、その後、2週間で約30人の同世代の後追い自殺が起こり、岡田さんと同じ飛び降りという方法を選んだ 人が多くいたことが分かっています」

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