「韓国消滅」と慌てふためく韓国人…急激に落ちる出生率は“世界ワースト1” 日本への「上から目線」は続くのか

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IMF危機が諸悪の根源

――「競争圧力」も「経済的困難さ」も昔から存在したはずです。なぜ、21世紀に入って出生率が低迷したのでしょうか?

鈴置:私は1997年のIMF(国際通貨基金)危機が韓国社会の仕組みを根本から変えたのが原因、と見ています。危機以前は「勝者」でなくとも、それなりに生きていける社会でした。典型的なのが企業の雇用制度です。

 韓国企業の多くが日本的な経営をお手本にしていて、終身雇用と年功序列が原則でした。しかしIMF危機以降は、企業は従業員を容易に馘首するようになり、業績が悪化しなくても毎年、査定の下位10%の人は自動的に首にする会社が珍しくなくなりました。

 一気に米国式経営に転換したのです。これが韓国社会に及ぼした影響は図りしれません。韓国人にとって「競争」は生き残りをかけた戦いとなったのです。

 先ほど、雇用の不安定さが出生率の低下をもたらすとのデータを紹介しました。不安定な雇用もIMF危機の後遺症です。危機の後、企業は多くの正規雇用を非正規雇用に切り替えました。

 危機を乗り切るためにやむなく社会システムを激変させたことが、異様な速度での少子化というツケになって今、跳ね返っているのです。

自殺率世界一が示す「生きづらさ」

「生きづらさ」を象徴する自殺死亡率(以下、自殺率)――人口10万人当たりの自殺者数を見ても、韓国社会の根本的な変化は明らかです。OECDが2021年に集計した各国の自殺率によると、韓国が24・1(2020年)でワースト世界1位です。

 2位のリトアニア(18・5=2021年)、3位のスロベニア(15・7=2020年)、4位の日本(15・4=2020年)と比べても突出しています。韓国社会にいかにストレスが多いか分かります。

 しかし、少し前までの韓国では自殺はこんなに多くなかった。韓国の自殺率は1995年までは10以下。一方、1988年ごろまでは日本は現在よりも少し高い20前後を推移していました。明らかに韓国の自殺率の方が低かったのです。

 両国ともに1997年の金融システム不安で、自殺率が急上昇しましたが韓国の上がり方が激しく、一時は30を超すほどになりましました。反対に、日本は2010年代に入り下がりました。アベノミクスのおかげもあったのでしょう。かくして日韓の自殺率は逆転したのですが、契機はIMF危機にあったのです。

 危機前は韓国の自殺者が少ないことから「悲観的な日本人、楽天的な韓国人」といった対比で語られていました。今や、韓国人から「呑気な日本人」とからかわれるようになったわけですが。

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