やせるだけでなくアルツハイマー予防にも 魔法の薬「オゼンピック」「ウゴービ」の効能を示す科学的データ

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炎症を抑制する

「心不全の患者の健康状態などを測るカンザスシティスコア(KCCQ)という指標があります。プラセボ群ではこの指標が8.7ポイント改善したのに対して、セマグルチド群では16.6ポイント改善しています。この結果は、心不全の症状が悪化しなかったという点で賞賛に値します」(坂本氏)

 また、耐久力を測る6分間の歩行検査では、

「セマグルチド群の患者の方が21.5メートル遠くまで歩けるようになっていました。一方プラセボ群は1.2メートルです。心不全は、悪くなるにつれて身体機能も低下していきます。セマグルチドの投与で身体機能が改善したということは、直接的に心不全の改善につながったといえると思います」(同)

 そのメカニズムは判然としていないが、

「GLP-1受容体作動薬によって酸化ストレスと炎症が軽減される、というのは医師の間ではすでに広く知られています」

 坂本氏はそう明かす。

「GLP-1受容体作動薬は血糖低下作用に限らず、体重、血圧にも影響を与え、間接的に、酸化ストレスと炎症を抑制することができる可能性があります。酸化ストレスが改善されると、脳血管・心臓・腎臓の状態が好転します。また、炎症の軽減とは、例えば、動脈硬化層の炎症反応が低くなったり、心臓の細胞の炎症が軽くなる、といった臓器への良い効果を示します」

人工透析サービス関連銘柄の株価を急落させるほどのインパクト

 実際、オゼンピックなどを製造するノボノルディスク社は今年8月、次のような臨床試験結果も発表している。

 対象となったのは、肥満で心血管系疾患の既往歴があり、糖尿病の既往歴がない45歳以上の1万7604人。セマグルチド2.4ミリグラム投与群では、プラセボ群に比べて、脳卒中や心臓発作などのリスクが20%減少したという。

 ノボノルディスク社は今年10月、腎臓に関しても“前向き”なリリースを公表している。オゼンピックの臨床試験の中間解析で、糖尿病患者の腎疾患の進行を遅らせる効果があることが示された。有効中止の基準を満たしたため、臨床試験を約1年前倒しで打ち切る、というのである。この発表は、人工透析サービス関連銘柄の株価を軒並み急落させるほど、インパクトの大きなものだった。

「糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬が、心臓病や腎臓病への保険適用が認められたのと同じ流れで来ています。SGLT2阻害薬が使えない腎臓病の患者さんに対して、GLP-1受容体作動薬が新たな道を開いたといえるでしょう。さらなる臨床試験が実施されれば、比較的近い将来、腎臓病に効く薬として販売される可能性はあるかもしれません」(同)

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