「中堅企業」を支援して日本の「産業」を作り直す――木原正裕(みずほフィナンシャルグループ執行役社長 グループCEO)【佐藤優の頂上対決】

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日本の富裕層を取り込む

佐藤 事前に頂いた資料で、みずほ銀行の預金残高が昨年度は164兆円と、この10年間、ずっと増え続けていることを知りました。これと直結するわけではないと思いますが、私の皮膚感覚では、現在、日本の富裕層はかなり増えているように思います。そうなると、日本でもプライべートバンキング事業が重要になってくる気がします。

木原 私もそう認識しています。個人の資産運用もしっかりやっていきたい。そのため、われわれもいろんな形で富裕層の方々と接点を持つようにしています。

佐藤 その資産が外資に持っていかれるのは日本の損失ですからね。

木原 ただ、外資に勝てない分野もあるんです。例えばハワイやヨーロッパなどの海外不動産や絵画の紹介は得意ではありません。この分野ですぐに人材を育成するのは難しいと思いますので、ここ数年ほどはスイスのプライベートバンク「ロンバー・オディエ」とタイアップして、富裕層向けの商品を提供しています。

佐藤 ロシアのウクライナ侵攻や米中対立で国家機能が強化され、グローバリゼーションに歯止めがかかっていますから、日本の富裕層も気軽に海外に居を移したり、簡単に海外資産を買ったりしなくなっていくと思います。そうすると国内への投資に向かいます。

木原 そうした方々が国内の不動産に目を向けられれば、グループにはみずほ信託銀行がありますから、さまざまなお手伝いができます。ただの土地取引だけでなく、不動産投資にレバレッジをかけるような機能があるプランも用意しています。

佐藤 私は千葉県や埼玉県に隠れ富裕層が多いんじゃないかと思っているんですよ。戦後、農地改革で多くの農地が地主から小作人のものになりましたが、そこが宅地になって価格が高騰した。いまはその世代がいなくなっていく時期にあたりますが、彼らは奥さんや孫を養子にするなど、さまざまな相続対策をしています。

木原 信託銀行では、相続もいろいろご提案できると思いますね。

佐藤 グループには、地域に根ざしたかなりの数の支店があります。ここはどうしていきますか。

木原 銀行、信託、証券それぞれに支店がありますが、すべてを見直しています。その地域にあって、支店がどれだけの付加価値を提供できているか、地域のコミュニティーの中でどれだけの認知度を得ているか、問い直してもらっています。地域の金融機関と一緒にやって効果を上げるとか、産業を誘致するとか、地域に貢献していればいいのですが、それがないのならそこにある必要はない。その経営資源は他で使った方がいいと思っています。

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