コロナ禍で激増の「無人販売店」が“コンセプト崩壊” 有人化、脱専門店化…何が起きているのか

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 コロナ禍に一気に店舗数を増やした無人販売店が岐路に立っている。扱う商品の種類を増やす“脱専門店化”するお店が増え、さらに有人化に踏み切った店舗もあるという。

ラーメン、Tシャツを売り始めた

 無人販売店の1つの特徴として、肉や餃子などの商品に特化した点がある。

 2018年9月に1号店を開店し、北海道から九州まで、全国430店舗を展開する無人販売店のパイオニア的存在である「餃子の雪松」は、1パック36個入りの餃子(税込1000円)の1種類のみの単品販売で支持を集めてきた。

 そんな雪松だが、昨年11月から「日本ラーメン科学研究所」なるシリーズの冷凍ラーメンの販売を開始した。「醤油の黄金比」「魚介だし醤油の黄金比」「豚骨の黄金比」「味噌の黄金比」の4種を展開しており、価格は3食入りで各1000円(税込)。全国の雪松の店舗内に併設されたラーメンコーナーで販売している。

 餃子専門店からラーメンも扱う店へ……こうした“脱専門店化”の流れは他にもある。

 東京の高田馬場や飯田橋などで展開する「餃子図書館」は、その名の通り全国の人気冷凍餃子を集めた専門店だったが、今年9月に明大前駅店を「KAKUDAI BASE」にリニューアルした。様々な自販機が並ぶ店舗では、もつ煮など冷凍グルメにとどまらず、化粧品、日用品などを扱うようになった。

 肉の無人販売店として、2022年9月の創業からわずか1年ほどで全国180店舗を達成した「おウチdeお肉」も脱専門店化が進む。亀有店、北赤羽店、西日暮里店など複数の店舗が「達人の一品」という、Tシャツやシャンプーなど肉以外の製品も扱う店舗にリニューアルした。ちなみに、「おウチdeお肉」は、店舗の設備そのままにフランチャイズオーナーを引き継ぐ後継者を募集する「売却リスト」が出回っている。

 やはり1つの商品に特化するのは難しく、変化が求められているのだろう。

今年9月から有人化

「おウチdeお肉」の創業からさかのぼること1年半の2021年3月に、日本で初めて「黒毛和牛の無人販売」を始めたのが、東京都恵比寿にある「naizoo(ナイゾー)」である。店主の蒲池章一郎さんは店のコンセプトを次のように話す。

「スーパーなどで出回らないような新鮮なホルモンを冷凍し、販売しています。商品を選ぶところから会計まで、お客さん自身で行う無人販売のスタイルです。コロナ禍で外食が減り、家で焼肉をする人に良いお肉を食べて欲しかったんです。特に、ホルモンって美容や健康にも良いので、若い人に気軽に食べる機会を提供したかった。最初から無人販売にこだわっていたわけではありません。当時、餃子の雪松が無人販売で店舗を増やしていたので、肉でも出来るんではないかと思いつきました。お店は5坪程度しかないので、売上を上げるためには稼働時間を延ばすしかないとなった。結果的には、日本で初めての24時間無人の肉販売店になったわけです」

 その上で、肉専門店の経営の難しさをこう語る。

「そもそも昔から商店街にあったようなお肉屋さんは、何でも揃うスーパーに取って代わられてしまったわけです。それだけ、肉だけを売るお店というのは続けていくのが難しい。最近は自由に外食できるようになったので、家で良いお肉を食べたいという需要も減っています」

「ナイゾー」は専門店の形態こそ維持しているものの、やはり大きな変化を迫られた。万引きや会計ごまかしの対策のために、今年9月に有人化に踏み切ったのだ。

「そもそも、肉の無人販売という業態に転換が必要だったと思います。開店した当初は、コロナ禍のニーズに合っていただけで、長く続くものではないと感じていました。有人化に合わせて角打ち営業を始めたのも、肉の販売だけでは売上がほとんど横ばいか微減だったからです。その上、万引き対策は心理的負担が大きすぎます」

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