【独占】ウクライナ軍「ドローン部隊」に密着取材 前線が近づくと「スマホの電源を切れ」 コントロールブースで見た光景は

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偵察用ドローンとシステムは約1800万円

 ドローン部隊の1ユニットは3人。ドローンのパーツを車から下ろし、組み立てる。有翼タイプの偵察用ドローンで、ウクライナ製。ドローンを含めこのシステムには12万ドル(約1800万円)かかるという。ゴムの張力によるバンジー式カタパルトで発射されたドローンは、空高く上昇してすぐに見えなくなった。

 スタッフはただちに車に戻り、後部に設置されたコントロールブースに座る。しばらくするとロシア軍との前線付近がモニターに映りはじめた。ドローンの先端に取り付けられたカメラがとらえた映像だ。ドローンは米スペースX社の衛星通信網「スターリンク」と接続して飛行し、映像はGPSの位置情報を使って解析される。そのデータが砲兵部隊に送られ、正確な照準による攻撃を可能にするのだ。

 ウクライナ軍が各地で、ロシア軍の戦車などの軍用車両をピンポイントで破壊し、大戦果を挙げたのには偵察ドローンからの情報が大きく寄与している。また、友軍が砲撃中に空から刻々と着弾地点を知らせ、照準を修正するのも重要な役割だ。この日は雲が低く垂れ、視界が良くなかったため、位置データの収集を行って撤収した。

 驚いたのは、ドローン部隊の使用する軍用車が民間ボランティアからの寄贈だったこと。ドローン自体を国内外のボランティアが調達して軍に贈るのも珍しくないという。ウクライナ政府の財政が厳しいことや蔓延する汚職のせいで、前線に十分な軍需品が届かないからだ。

 それを補うため、NGOや各種ボランティア団体が寄付やクラウドファンディングで前線の部隊を支援している。市民自らが兵士を支えて戦っている姿に、ウクライナが屈しない理由の一つを見る思いがする。

反転攻勢はドローンのおかげ…国内生産量が拡大

 ウクライナがドローンを重視するのは、空軍力におけるロシアとの差を少しでも埋めて、地上戦を支援する必要があるからだ。

 兵力で劣るウクライナ軍がロシア軍を押し返し、さらに6月からの反転攻勢に出ることができたのはドローンのおかげと言っても過言ではない。ドローンでロシア兵の兵舎やミサイル、ドローンの機能を妨害する電子基地、弾薬庫などの位置を特定し、その情報をもとに米国から提供された高機動ロケット砲システム「ハイマース」などで攻撃するというのが戦況を好転させる一つのパターンになっている。

 ドローンはまた、ジェット戦闘機やミサイルなどと違って調達コストが安く、すぐに大量生産が可能だ。ロシアによる侵攻開始当時、ウクライナは生産体制が貧弱で、外国製のドローン、とくにトルコ製ドローン「バイラクタル」などに依拠していたが、その後は自国生産を急速に拡大。副首相兼デジタル改革相のミハイロ・フェドロフ氏によれば、今年のドローンの国内生産は去年の100倍になったという。

 私たちが取材したドローンもウクライナ製で、部隊の兵士によれば最近は自国製が増えているとのこと。「100倍」という数字の信憑性はともかく、自国での調達に拍車がかかっているのは確かだろう。

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