【独占】ウクライナ軍「ドローン部隊」に密着取材 前線が近づくと「スマホの電源を切れ」 コントロールブースで見た光景は

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ドローン部隊の前線へ同行取材を敢行

 ウクライナ軍が6月に反転攻勢を始めて5カ月。もうすぐ厳しい冬を迎える10月下旬から11月にかけて両軍がにらみ合う最前線を訪ねた。

 最も激しい戦闘が続いているのは、ドネツク州を中心とするウクライナ東部と、南部ザポリージャ州で、全体としてはウクライナ側が少しずつロシア軍の占領地を取り戻しつつあるものの、最近はロシア軍が東部戦線に攻勢をかけてきている。

 私たちが取材中の10月21日、ウクライナ軍参謀本部は、19日から20日にかけての24時間でロシア兵1380人が死亡したと発表した。ロシアの侵攻以来、1日の犠牲者数としては最多の規模だ。激戦があったのは東部ドネツク州北西部の要衝アウジーイウカで、戦車55両を含む175両の装甲車を破壊したという。

 そのアウジーイウカが位置する東部戦線で戦う、ウクライナ陸軍第28旅団のドローン部隊を私たちは取材した。ウクライナでの戦争は史上初の「ドローン戦争」と言われ、ドローンは各地で戦局を左右する「ゲームチェンジャー」となっている。交渉をつづけた結果、ドローン部隊の前線への同行取材が許されたのだ。

敵の射程圏内で携帯電話を使うのは自殺行為

「スマホの電源を切れ」

 前線が近づくと、ウクライナ軍の兵士が厳しい表情で指示を出した。スマホの発する電波で私たちの位置が特定され、攻撃対象になるのだという。ここはロシア軍の戦闘部隊から20キロの地点。ロシア、ウクライナともに、敵側の携帯電話の端末情報を得て位置を解析する仕組みを持っている。

 今年の1月1日未明、ここドネツク州のマキイウカで、ロシア軍臨時兵舎をウクライナがミサイルで攻撃し多数(ウクライナ発表で400人以上)が死亡した。ロシア国防省はこれにつき、ロシア兵が禁を破って携帯電話を使用したからだと発表している。敵の射程圏内で携帯電話を使うのは自殺行為。スマホの電源を切るよう命じられ、取材者である私たちも電子戦の「当事者」になったのかと緊張する。

 緑色に塗ってカムフラージュした軍用車に乗り、着いたのは地平線まで広がる麦畑。冬小麦の新芽が青々と育っている。数キロ先だろうか、重火器の連続した射撃音が聞こえる。「ロシアのカミカゼ(自爆型)ドローンと偵察用ドローンが一緒に飛んできて、友軍が迎撃している」とのこと。同行の兵士は、上空の「眼」から隠れるように、車を木立の中に乗り入れて停めた。

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