岸田政権の肝いり「ライドシェア」は本当に安全か? 「性的暴行」に「殺人」まで起きていた導入先進国「中国」の“凶悪事件簿”

国際 中国

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 11月6日、内閣府・規制改革推進会議の作業部会で「ライドシェア」導入に向けた議論が本格的にスタートした。年内にも報告を取りまとめ、政府は来年度の予算編成に反映させたい意向だ。しかし他国で導入当初に起きた混乱や悲惨な事件については深く検証する気配は見られず、拙速な議論を懸念する声も上がっている。なかでも「ライドシェア先進国」中国で起きた“凶悪事件”の数々は日本に重い課題を突き付けているという。

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 一般の個人が自家用車などを使って有料で客を運ぶ「ライドシェア」は、これまでは「白タク」と呼ばれ、道路運送法で原則禁止されてきた経緯がある。

「導入議論が持ち上がった背景には、深刻な“タクシー不足”が挙げられます。個人タクシーを除いたドライバー数はコロナ禍による収入減から離職が相次ぎ、コロナ前と比べ約2割減少。インバウンド需要が回復するなか、観光地だけでなく都市部でもタクシー不足が顕在化しています。このままでは観光立国に向けた障壁にもなりかねず、岸田文雄首相みずからが旗振り役となって導入への意欲を示している」(全国紙経済部記者)

 しかし“前のめり”な政府の姿勢に対し、6日の作業部会ではタクシー業界側がこう反論する一幕も。

「タクシー運転手に必要な第2種運転免許を持たないドライバーが事故を起こした場合、“誰が責任を取るのか?”といった当然の疑問に始まり、ライドシェアは韓国や香港のほか、OECD加盟国の8割で禁止や規制されている現状を指摘。さらに米Uberで2020年に起きた性的暴行事件の報告数が998件にのぼることなども資料で示されました」(同)

7回のSOSも無視

 実は米Uberの事例とは比較にならない「ライドシェア史上最悪」と言われる残虐な事件が起きたのが中国だ。中国のライドシェアは2012年に設立された配車アプリ最大手DiDi(滴滴)が圧倒的なシェアを誇るが、同社の躍進は16年に米Uberの中国事業を買収したことが契機とされる。

「乗車地点と降車地点を入力すると、待ち時間や目的地への到着予定時間、料金などが表示され、さらに車のタイプまで選べるなど利便性の高さが人気の理由。中国ではタクシーに乗る時、街中で手を上げるのではなく、スマホを使って呼ぶのが一般的です」(中国人留学生)

 ところが急成長を遂げていた最中の18年5月と8月、DiDiやライドシェアの評価を一変させる事件が発生——。中国在住の日本人ジャーナリストが解説する。

「8月の事件は浙江省温州で起きました。20歳の女性が友人の誕生日を祝った帰りにDiDiを利用。やって来た27歳の男が運転する車に乗り込んだ後、ひと気のない山道へと連れていかれ、暴行後に刃物で刺殺されたのです。女性は途中、車内から友人に“助けて”とのメッセージを送り、受け取った友人がDiDi側に7回も通報したにもかかわらず、DiDiは警察へ連絡することもなく放置しました」

 このドライバーに関しては、事件前に「人通りのない場所に突然、連れて行こうとした」などの苦情が複数寄せられていたが、DiDi側は何の対処もしなかったという。

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