理想の睡眠ルーティンは? 脳の「老廃物除去」を作動させる極意と腹式呼吸のススメ

ドクター新潮 ライフ

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 われわれの脳は、幼い頃にとどまらず高齢になってもなお、新しい神経細胞を生み出すことができるという。ハーバード大学・ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行氏が語る理想の睡眠ルーティンとは?

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 神経細胞が新生する「歯状回」のある海馬を増強するには、体温調節やホルモン分泌など人体の基本的な機能のリズムである24時間周期(サーカディアンリズム)を健康な生活に合わせ、食事や睡眠のタイミングを安定化させることがポイントとなります。

 なかでも質の高い睡眠は大変重要です。寝入ってから90~180分は「ノンレム睡眠」の深いレベルに入るというのが健康なパターンですが、4段階ある深さの中でも、最も奥の部分にまで到達するような睡眠が理想的です。この間は成長ホルモンが多く分泌されており、脳で「グリンパティック(老廃物除去)システム」が作動して脳内が“洗浄”されます。アルツハイマー型認知症の原因となるタウたんぱく質も洗い流され、毛細血管のすみずみまで血流が増え、脳が再生されやすくなるわけです。

 ノンレム睡眠中は、脳の神経細胞だけでなく全身の細胞を再生する時間帯となっています。成長ホルモンを全身に巡らせて細胞の再生を促すために必要な睡眠時間は、成人の場合で合計7時間。この間は睡眠を深くするホルモン「メラトニン」の分泌も盛んになっており、活性酸素を除去する効果も期待できます。

理想的なルーティンは?

 深い睡眠を得るためには、自律神経系の副交感神経がしっかり優位にあるような状態が不可欠です。睡眠前の段階で自律神経を整えておくのが望ましく、そのためには日中に適度な運動をすること、そして朝はできるだけ同じ時間に起き、サーカディアンリズムを合わせてあげることです。

 理想的なのは日光を浴びるところから始めて1時間以内に朝食を取り、さらに5、6時間空けて昼食、また5、6時間後に夕食というパターンです。体内の消化活動には3、4時間が必要で、その後に空腹の時間を1、2時間置くと成長ホルモンが分泌されます。間隔を空け過ぎたり食事の回数を増やしたりすると、リズムはずれてしまいます。

 起床時に曇りや雨でも、大体2千ルクス以上の光を1分ほど浴びれば、脳を起こす一定のスイッチとなります。また夕食から就寝までは、最低4時間は空けたいところです。胃に食物が入ったまま寝ると、それが刺激となって睡眠の質が下がってしまうのです。

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