Jリーグ30周年 元サッカーダイジェスト編集長が選ぶ「思い出のゴールベスト10」芸術的ループシュートも

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ジーコ対リネカー

「ヘディングシュート部門」も「J30ベストアウォーズ」と同じだ。14年11月30日のJ1昇格プレーオフ準決勝、ジュビロ磐田対モンテディオ山形戦での山形のGK山岸範宏のアディショナルタイム92分のヘディングシュートである。

 4位・磐田、6位・山形で進出した昇格プレーオフ。試合は1-1のまま終われば磐田が決勝に進出する。すると92分の右CKに山岸が攻撃参加。DF石川竜也のクロスをニアサイドで合わせると、ボールは放物線を描いて逆サイドに決まり、これが決勝点となった。

 山形はジェフユナイテッド千葉との決勝でも1-0で勝利を収め、J1復帰を果たす。そしてGKによるCKからの得点と、ヘディングによる得点も、Jリーグの公式戦では初めての出来事だった。

「J30ベストアウォーズ」の「フリーキック部門」は16年4月2日の第5節、ガンバ大阪対横浜F・マリノス戦でMF中村俊輔がゴール右上スミに決めたロングシュートが選ばれた。

 しかし、私が選ぶのは93年5月16日の第1節、鹿島アントラーズ対名古屋グランパスエイト戦での鹿島のMFジーコのハットトリックにつながる直接FKである。「ジーコ対ゲーリー・リネカー対決」として注目を集めた一戦だったが、結果は鹿島が5-0と圧勝した。

 ジーコは25分にゴール前のこぼれ球を蹴り込んで先制すると、30分には左サイドのFKをクロスバーに当てながら直接ねじ込み、63分にはFWアルシンドの左クロスをボレーで決め、Jリーグハットトリック第1号をあっさりと達成した。「Jリーグに10番目に入ったクラブ」の急成長と、ジーコの凄さを感じた開幕戦だった。

芸術的なループシュート

「J30ベストアウォーズ」でのゴール部門は以上だが、これからは独自の5ゴールを選んでみた。

 まずはJリーグ30周年ということで、93年5月15日の開幕戦、ヴェルディ川崎対横浜マリノス戦での記念すべき初ゴールを挙げたい。華やかな開幕セレモニーの後に始まった試合には5万9626人もの大観衆が詰めかけた。

 そして19分、川崎のオランダ人FWへニー・マイヤーが左サイドからドリブルで持ち込むと、横浜のDF小泉淳嗣のチャージも巨体を生かしてブロックし、右足のミドルシュートを逆サイドのゴール上に突き刺した。試合は横浜が逆転勝ちを収めたが、プロリーグの開幕を待ちわびたサッカーファンにとっては「夢のような一夜」だった。

 続いては94年12月2日、サントリー・チャンピオンシップ第2節のヴェルディ川崎対サンフレッチェ広島戦で80分に川崎のMFラモス瑠偉が決めたループによる決勝点だ。

 サントリーシリーズ(1stステージ)を広島が制したのは意外だったが、ニコスシリーズ(2ndステージ)は川崎がしっかりと調子を上げてきた。

 そして川崎は、チャンピオンシップ第1節を1-0でモノにすると、国立競技場での第2節も接戦になったが、80分、ゴール前のこぼれ球をラモスは右足つま先で持ち上げるようにダイレクトシュート。ボールは大きく弧を描きながらも確実にゴールに吸い込まれ、川崎のJリーグ連覇を決定的にした。ラモスの“芸術的なループ”と言える一撃だった。

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