脳の血流を促しストレス耐性も上げるウォーキングの効能 「怒りや不安を鎮められるようになる」

ドクター新潮 ライフ

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怒りや不安も鎮まる

 毎朝の活動は、決まっていた方がいいと思います。新型コロナの流行前は起床から出社までの2時間、忙しいけれど決まっていた活動。これが毎日の作業興奮でした。朝の活動量が低調のままだと、一日中その状態が続いてしまう。これを防ぐために、通勤のない休日でも、あるいは仕事をリタイアした方も、一定の時刻までに動き始め、活動性を高めましょう。

 あわせて、歩く習慣も大切です。私の外来に来る物忘れに悩んでいた「元」患者さんたちは、皆さん公共交通機関を使って歩いて来院されます。コロナ禍でテレワークとなったことで睡眠時間が確保され、最初は良かったかもしれませんが、その後に抑うつ状態に苛まれた人もいます。これは通勤で歩くことがなくなった生活スタイルが要因のひとつでしょう。

 脳にとって良いのは血流が十分に保たれている状態です。脳の運動系はちょうど、頭にカチューシャを載せたような感じに広がっており、足に関する部分は脳の中で最も高い位置にある。つまり、歩くことで脳の最も高い部分を活性化させ、血液も上に向けて流れていく。ウォーキングは爽快感を与えてくれるだけでなく、全身の血流が良くなるという点でも理論的に正しいわけです。また運動系の血液量が増えることで相対的に感情系が抑えられるので、怒りや不安などのストレスも鎮めることができます。

なぜ哲学者は歩く?

 哲学者が歩きながら考えるのも、余計なことを考えずに集中できるからです。ウォーキングなどの運動を習慣化すればストレスにさらされた時のストレス物質の分泌量が減り、またこれに対するストレス反応も抑えられるのです。

 私たちの生活からストレスをなくすことはできませんが、抵抗力を高めることはできます。記録でストレスを回避し、生活リズムを安定させて健康を維持し、さらにウォーキングなどでストレス耐性を高める生活をしてみると、人生ははるかに楽になります。私も仕事で大変な時ほど職場から歩いて帰ったものです。頭の中をゆっくり整理しながら30分程度でしたが、気分は晴れやかになりました。

築山 節
北品川クリニック・予防医学センター所長

週刊新潮 2023年10月26日号掲載

特集「齢を重ねても脳は若返る カギは『神経細胞の新生』 “脳のプロ”『老人脳』にならない“新生”法」より

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