“親孝行の精神“は絶滅寸前で珍現象も…中国の介護問題が日本よりはるかに深刻なワケ

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中国経済不調の“元凶”はさらに深刻化

 中国政府がようやく重い腰を上げた。

 国会にあたる全国人民代表大会が10月24日、今年の新規国債の発行を1兆元(約20兆5000億円)増額することを決定した。年度途中での予算修正は、中国では異例だ。

 これまでの財政出動は地方債が中心だったが、地方政府の財政難が深刻化しており、これ以上の発行は困難となっている。このため、財政悪化を招く経済政策に後ろ向きだった中央政府が、やむなく国債を発行して資金を調達することになった形だ。

 増額分は今年の夏に豪雨被害を受けた地域の経済復興に充てる計画だ。交通や通信などのインフラ整備の需要を創出し、景気を下支えする狙いもあると言われているが、追加財政の規模は中国の国内総生産(GDP)の0.8%に過ぎない。「中国経済の回復にどれほど寄与するかは不確実だ」との声が上がっている(10月26日付日本経済新聞)。

 中国経済不調の元凶である不動産開発業界の状況はさらに深刻化している。中国不動産開発大手「恒生集団」に続いて注目されているのは「碧桂園」だ。

 10月25日付ブルームバーグによれば、「碧桂園」発行のドル建て債は「デフォルト(債務不履行)に該当する」と、債券の事務手続きを担う金融機関が債権者に通知した。

 碧桂園は6月末時点で1兆3642億元(約28兆円)の負債を抱えている。同社が経営破綻すれば、不動産開発業界全体の信用不安が深まることは間違いないだろう。

中国の介護を支える精神的な支柱は「親孝行」

 このところ、中国経済の「日本化(不動産バブル崩壊を契機として長期不況に陥ること)」を指摘する声が多くなっているが、筆者は「さらに深刻な『日本化』の問題がある」と考えている。その問題とは「少子高齢化」だ。

 中国政府は10月12日、昨年の出生数が956万人と前年(1062万人)から10%減少し、1949年の統計開始以来の低水準に落ち込んだことを明らかにした。昨年、中国の人口は60年ぶりに減少し、14億1000万人となっている。

 少子化に歯止めがかからない一方、高齢化の勢いは強まるばかりだ。

 中国の昨年の65歳以上の人口比率(高齢化率)は約14%となり、「高齢社会」に突入した。高齢化率は2034年には21%台となり、日本のような「超高齢社会」になるのは確実な情勢だ。

 高齢者が急増する中国では、家族などがつきっきりで介護してきた伝統的な「24時間介護」は不可能になりつつある。

 中国の介護を支える精神的な支柱は「親孝行」の教えだ。中国では古来より美徳とされてきたが、最近、この点でも日本化が進んでいるようだ。

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