ソフトバンク、過去10年の“ドラ1”が活躍できない…他球団からは「選手の見極めが疎かになっている」と厳しい指摘

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常勝軍団の崩壊を招いた、ドラフト戦略の失敗

「盛者必衰」。仏教の人生観でこの世の無常を表す言葉であり、平家物語の冒頭の句で有名だ。今、この言葉を痛感させられている球団がソフトバンクである。2011年からの10年間で7度の日本一を達成。日本シリーズ4連覇は、巨人の9連覇に次ぐ記録である。それが一転、2021年に8年ぶりのBクラスに沈むと、オフに80億円という“異次元の大補強”を敢行した今シーズンも3位に終わり、クライマックス・シリーズ(CS)でロッテに敗れて、長いオフに突入してしまった。【西尾典文/野球ライター】

 この結果、2年間チームの指揮を執った藤本博史監督が辞任し、新監督には小久保裕紀氏の就任が発表された。チーム改革は、監督交代だけにとどまらない。ソフトバンクの黄金時代を支えた功労者が戦力外通告を受けたのだ。

 通算127セーブを挙げた森唯斗や2018年に22本塁打を放った上林誠知らがチームを去ることになった。“血の入れ替え”を断行して再建を図るソフトバンクだが、そもそもドラフト戦略の失敗が、常勝軍団の崩壊を招いたことを強く指摘したい。

 今回、戦力外通告を受けた選手のなかには、“ドラ1コンビ”が含まれている。投手の高橋純平(2015年)と外野手の佐藤直樹(2019年)である。高橋の通算成績は、56試合に登板し、4勝3敗19ホールド、防御率2.63。佐藤は114試合に出場し、打率.129、2本塁打といずれも寂しい成績で終わっている。

 過去10年を振り返ると、“ドラ1”で一軍の主力に成長した選手は、中継ぎの松本裕樹(2016年)と甲斐野央(2018年)だけだ。彼らを含めると、半数の5人がチームを去ることになる(※佐藤は球団から育成契約の打診を受けたが、進路は未定。10月26日現在)。これだけ“ドラ1”が戦力になっていないチームは、日本球界を見渡しても、ソフトバンクのみである。

育成ドラフトで獲得する選手への“過信”

 2位以降に指名した選手はどうか。前述した森(2013年2位)を除くと、完全に主力になった選手は、栗原陵矢(2014年2位)、三森大貴(2016年4位)、周東佑京(2017年育成2位)、津森宥紀(2019年3位)と少ない。

 チームが黄金期を迎えてレギュラー陣が充実していたため、なかなか若手選手が、そのレベルに到達できなかった。こうした点を考慮しても、既に退団している選手が目立ち、スカウティングと育成に問題を抱えていることは確かだろう。ただ、育成面は、12球団のなかで最も充実しているファームの施設を備えており、ハード面では抜きに出ている。そうなれば、スカウティングの問題だ。

 筆者が気になる点は、育成ドラフトで獲得する選手に対する“過信”である。ドラフトで獲得する選手に対する“過信”である。
2010年のドラフトでは、千賀滉大(現・メッツ)、牧原大成、甲斐拓也と、後に侍ジャパンに選出された選手を育成ドラフトで獲得しているとはいえ、こうしたケースは、なかなか出てこない。

 当然、育成ドラフトまで残っている選手は、スカウト陣の評価が低く、主力選手に成長する可能性は高くない。もちろん、ソフトバンクは、そんなことは百も承知で、育成ドラフトで大量の選手を指名している。だが、スカウトの数は、他球団と比較して圧倒的に多いわけではなく、細かく選手の力量を分析するには、物理的に限界があるのはないだろうか。

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