「パワハラをする人間はただのバカ」 100%嫌われ、復讐もされるのになぜするの?(中川淳一郎)

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 パワハラ被害を訴える人と多数会ってきましたが、今回はパワハラをする側の心理について考察してみます。私、パワハラする人ってただのバカだと思うんですよ。何しろ100%の確率で「嫌われる」「没落した時に悪評をまき散らかされる」から。

 人間の恨みはすさまじいもので、一度パワハラを受けた場合、大抵の人は「この野郎、いつか貴様に復讐するぞ」と心に誓ったりする。パワハラをした側は「愛のムチだった」やら「あの時の情勢だと仕方なかった」「仕事上、厳しく接せざるを得なかった」と言い訳をしますが、そんな理屈は恨みを抱く者には通用しない。

 有利なポジションを追われた元パワハラ野郎にもはや擁護者はいない。誰も同氏の権勢を恐れていない。そんな時の告発ほど怖いことはない。何しろ、これまでの華やかな人生を完全に転覆させる危険があるわけですよ、過去のパワハラというものは。

 私のこれまでの仕事人生を振り返りましたが、会社員時代の4年間はひたすら下っ端だったのでパワハラをやる権限もない。その後27歳でフリーランスになり、36歳で2人会社の社長になり、多くのフリーランスを雇いましたが、パワハラは多分していないと思います。理由は、いちいち他人に期待しないですし、ムカついたらただ切るだけ。

 パワハラをする人って、その人間を切ることができないからやるんじゃないですかね?

 今でもよく覚えているのが、私の会社で外注していた若い男・Aのこと。彼はフリーのライター・編集者として頭角を現しつつありました。それについて「よいよい、もっと活躍して著名人になるんだぞ~」と応援していたのですが、増長し過ぎた。

 ある日、弊社の従業員・Y嬢からお願いされた仕事を拒否しました。その時彼は「中川さんの仕事はしますが、Yさんの仕事はしません。ボク、今案外売れているんですよ~」とのこと。当然私は「なんじゃ? A、お前、Yに対して何を言っておるのだ。お前とは縁を切る。さらばだ!」と彼に電話。結婚式に参加していたらしいのですが、終了後すぐに私の最寄駅に来て謝罪をしました。しかし、こちらは「Yの仕事はしないが中川さんの仕事はする」という、Yのことを軽んじる発言は許すわけにはいかない。

 お前のことは許さん、もうオレの前から去れ、と言い、縁を切りました。これをパワハラと解釈するかどうかは意見が分かれるかもしれません。私はそうは捉えません。「アホに怒りを見せ、縁を切った」だけです。パワハラというものは、その立場を利用し、ネチネチと嫌がらせを続ける行為。私の場合、プロ同士の付き合いで「お前とは契約せん!」と宣言したのであり、Aを「いらない」と感じたためすぐに追放したにすぎない。

 他人に期待しない私には、興味のない人に対して「より良い仕事をしてもらいたい」なんて気持ちはないんです。しょせん人間なんて自分で道を切り開くべし。

 他人の人生に対して無関心になると、パワハラをせず悪評をまき散らかされない人生を送ることができます。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2023年10月26日号掲載

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