初デートの翌日、父親と共に夜逃げした初恋の人 42歳男性が喪失感を抱えたまま出会った妻と、後に判明するまさかの関係

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 人は出会うべくして出会うべき人と出会うという言葉がある。だから出会いには意味がある、と。元横綱貴乃花が、30年ぶりに出会った「初恋の人」と再婚を果たしていたと報じられた。そういう幸運の再会もあれば、やはり出会ってはいけない人と再会してしまうケースもあるのではないだろうか。

 日笠隆平さん(42歳・仮名=以下同))は、数ヶ月前、「自分はいたって平凡なのに、自分を取り巻く状況が波乱に満ちている」というメールをくれた。運命に抗うべきだったのかもしれないが、ほんの少しの疑念を抱きつつもなんとなく歩みを進めてしまった。その結果、今は闇の中にいる、と。

 隆平さんは中肉中背、本人が言うように一見、「どこにでもいるサラリーマン」だ。メガネの奥の目が優しいのが印象的だった。

「高校生までを北国で過ごしました。冬は雪に埋もれて、来る日も来る日もあたりは真っ白。同居している祖父母は口数が少なく、きょうだいは妹がひとり。僕が子どものころは冬になると父が東京に出稼ぎに行くこともありました。母は優しい人だったけど、いつも祖父母に遠慮して静かに暮らしている。そんな感じの家でしたね」

 大きな家だったが、廊下がいつも冷たかった。隆平さんはそうつぶやく。それが「家庭」の象徴だったのかもしれない。今は祖父母はなく、妹一家が両親、そして夫の両親もともに暮らす。妹に子どもは4人。

「10人家族ですよ。4人のじじばばがひとりずつ子どもを担当しているらしい(笑)。妹夫婦は共働きで商売をしているんですが、にぎやかに暮らしています。たまに帰省すると、知らない人が子どものめんどうを見ていたりする。近所の人が集まってくるような家になっているみたいです。あのシンとした家で、どうして妹のような陽気な性格ができあがったのかが不思議でたまりません」

中学時代の初恋

 隆平さんは「明るく振る舞っているが、根は暗い」タイプらしい。初恋は中学生のときだった。

「暗い純文学にはまっていた頃、同じ文芸クラブの子と少しだけつきあっていました。といっても放課後、読んだ本の感想を話したり、一緒に下校したりする程度のつきあいだったけど……。彼女、越してきたばかりだったんですよ。ちょっと陰のある子でいつもひとりでいたから僕から話しかけて親しくなった。夏休みに入ってすぐ、日帰りで隣の市の繁華街まで行ったのが唯一のデートらしいデートだったなあ。朝早く、彼女のおとうさんが車で駅まで送ってくれて」

 映画を観てカフェでお茶をした。帰りも彼女のおとうさんが最寄り駅まで迎えに来てくれた。駅から30分も車で走らないと彼の住む小さな町にたどり着けなかったのだ。

 それが彼女との最後のデートでもあった。翌日以降、急に彼女と連絡がとれなくなった。不安になって彼女が住んでいたアパートに行ってみるともぬけのから。近所の人に尋ねたところ、夜逃げしたのだという。

「おとうさんが借金抱えて一家が破綻したと。そもそも、どこかから逃げてきたらしいという噂でした。そういえばおとうさんと彼女のふたりで暮らしていたような気もする。あの日、駅まで送ってくれたおとうさんは『楽しんでこいよ。隆平くん、娘をよろしくな』と満面の笑みで送り出してくれた。でも数日後にはもう、そこにはいないとわかっていたんでしょうね。彼女自身もわかっていたのかもしれない。せつなかったですね」

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