「オマエらの客が注文したから来たんだぞ!」外国人観光客の増加でフードデリバリーサービスのトラブルが多発中 高級ホテルのロビーで繰り広げられる修羅場

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横行する不法投棄

 フードデリバリーサービスでは既にクレジット決済が行われている注文が多いので、業者側の売上が悪化することはない。中国人を筆頭とする外国人宿泊客は「料金は払っているし、業者も儲けているんだから問題ないだろう」と考えているのかもしれない。

 ちなみに、注文がキャンセルになると、料理なら配達員が食べても構わない。だが、ホテルの敷地内に捨ててしまう配達員もいるという。エントランスの植え込みや駐車場の陰に置いていくのだ。これは不法投棄であることは言うまでもない。そのため一部のホテルでは、捨てられた商品を見つけて処分するためスタッフが敷地内をパトロールするようになったそうだ。

 配達員にも事情がある。キャンセルとなった料理は食べられるとはいえ、一日に何度も中華料理を口にするのは不可能だ。何とか処分しなければならないが、公共のゴミ箱を探す手間をかけてはいられない。配達員は配達ごとに報酬を受け取る契約だ。キャンセル商品の処分に時間を費やす暇はなく、不法投棄して次の仕事を探すほうが合理的だ。

 その結果、ホテルの敷地内にはフードデリバリーサービスの商品が常に捨てられるようになってしまった。人手不足に悩むホテルにとって、パトロールの負担は大きい。投棄物を探すという新しい業務に従事することで通常業務に支障が出る。

欧米人観光客は激怒

 だが、「エントランスにハンバーガーや中華料理が捨てられている」という事態を一流ホテルが許すわけにはいかない。パトロールは強化せざるを得ず、そのために宿泊客へのサービスが滞ってしまうことすら珍しくないという。

 ちなみに、フードデリバリーサービスを注文した日本人の宿泊客にこうした事情を説明すると、即座に理解してくれることが多いそうだ。規則に従い、エントランスやロビーで配達員と会って商品を受け取る。ところが、ほとんどの外国人宿泊客は、何度説明しても納得してくれない。「客に指図するつもりか」と取り合わない者も多いという。

 とある欧米系の宿泊客は、とりあえずロビーでの受け取りに同意はしてくれた。だが、通訳として側にいたホテルスタッフに「どうして部屋まで届けさせないんだ!? 俺がOKなんだから持ってこさせたらいいだろう!」とひたすら抗議を繰り返した。それも上品な英語ではなく、罵り言葉を連発するような英語だったという。

 外資系のホテルだったため、経営幹部は全員が欧米系。欧米人の常識や感覚を重視した営業方針なのだが、来日した欧米人宿泊客とミスマッチが起きることはある。スタッフたちは肉体的にも精神的にも疲れ果ててしまう。

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