原付なぜ今になって排気量拡大? 専門家が懸念するポイントとは

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 原チャリなどと安っぽい呼ばれ方もするけれど、原動機付自転車(原付一種)は、立派な国民の足である。最高時速30キロ、大きな交差点では二段階右折といった制限がありながら、国内で最も売れているバイクなのだ。その原付に大きな変化が訪れようとしている。警察庁が原付の排気量の見直しを検討すると発表したのは9月7日である。

 警察庁の担当記者が言う。

「現行の原付一種の排気量は50cc以下となっていますが、これを125cc以下にまで引き上げる方針を示した。つまり、普通二輪小型限定と同じ排気量のバイクまで乗れるということです。11日には学者や業界団体、関係官庁のメンバーで第1回の検討会を開きました」

数年前から行政に働きかけが

 背景にあるのは、バイクメーカーの苦境だ。自動車同様、バイクにも排ガス規制が適用されており、今後もさらなる規制強化が予定されている。

「これに対してメーカーも2ストロークエンジン車を減らすなどの対策を取ってきましたが、原付という免許区分はアメリカやアジアの他国にはなく、いわば、ガラパゴスに生息する希少生物のようなもの。量産・輸出によるコストダウンが見込めず、お金をかけて規制をクリアするのも難しい。そこで数年前から業界団体は、クリアが比較的容易な125ccまでを原付一種とするよう行政に働きかけてきたのです」(同)

危惧される問題とは

 ただし、排気量が大きくなったからといって、ぶっ飛ばせるわけではない。時速30キロ制限と二段階右折はそのまま。最高出力も原付一種と同程度に制限されるという。警察庁は検討会を経て道路運送車両法等の改正に着手する予定だが、すんなりと排気量アップとなるのだろうか。モーターサイクルジャーナリストの小林ゆき氏が言う。

「気になるのは現行の普通二輪小型限定との区別です。原付二種とも呼ばれるこの車種はリアフェンダーについている三角マークと、ナンバープレートの色で判別できるようになっていますが、最近はカラフルなご当地プレートが出て来ました。だから大きな原付一種が登場したらパッと見て判別できるのか。(補助力が時速24キロに制限されている)電動アシスト自転車に似せた違法な電動バイクが横行しているのを見ていると心配になります」

 最近では電動キックボードも公道を走行しており、道路の左端はやたらと混雑している。新しい原付がどこに向かうのかは走ってみないと分からない。

週刊新潮 2023年9月28日号掲載

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