「彼女は恋愛が面倒だったんでしょう」 自分に有益なことしかしないエリート女性と結婚した41歳夫の苦悩

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 世の中には「相性が悪い」ということがある。大好きなのに、うまくやっていけない。「好きだからうまくいくとは限らない」と心理学者に聞いたこともある。恋愛がうまくいくコツは「うまくやっていける人を好きになること」らしい。

「僕は妻が好きでした。でもうまくいかない。自分が悪いのかと思ったこともあるけど、妻は今まで会ったことのないような不思議な性格の人で、とても僕以外とは一緒にやっていけないはず。離婚も考えてはいますが、妻は拒絶する。僕自身も、離婚はできない。いつも重いものを抱えて生きているような気がします」

 合わない相手とは恋愛の段階で別れておけばよかったのだろう。だが、米倉晋さん(41歳・仮名=以下同)は、妻となった希代子さんと別れようと思ったとき妊娠を告げられた。子どもができれば、家庭を作ればうまくいくかもしれない。晋さんはそう思って結婚を決意した。それが今から9年前だ。

「そもそも彼女と知り合ったのは、友だちの紹介なんです。僕はしっかりした気の強い子が好きだったから、『絶対、合うよ』と引き合わせてくれた。希代子は、とってもきれいで頭も良くて理想的な女性だった。つきあい初めてから、紹介してくれた友人が『本当につきあってるんだ。希代子は同性から評判悪いらしいよ、オレも知らなかったけど。一応、忠告しておく』と言われたんです。それは同性の嫉妬だろうと僕は思っていました」

あのとき結婚をやめていれば…

 結婚式をするのかしないのか、新居はどうするかと話し合っているうち、晋さんは希代子さんが5歳年上だと知った。紹介した友人は年齢を言わなかったし、何度か会っているうちに年齢の話になったときも希代子さんは晋さんと同い年だと言ったのだ。

「たまたま高校時代の話になったとき、なんか違和感があって問いただしたら5歳年上だ、と。彼女はまったく悪びれてなかった。僕が『嘘をついていたんだね』と言ったら、『たいした年齢差じゃないわよね』って。そうじゃない、嘘をついていたのが気になるんだと言ったら、ごめんなさいとは言ったけど、心に響いている感じはしなかった。前途多難だなと思った。あのとき結婚をやめていればと後悔したこともあります」

 とはいえ、新しい命が宿ってしまったのだから、もう後戻りはできなかった。ふたりとも覚悟を決めなければいけない。本当にちゃんと親になれるのかと不安だったが、それは希代子さんに対しても感じた。この人が母になって大丈夫なのか、と。

「仕事も忙しかったけれど、僕、ものすごく努力したんです。自分で言うのはおかしいとわかっている。でも希代子とうまくやっていくためにがんばったと思ってる」

 希代子さんは有名大学を優秀な成績で卒業、ある研究所に勤めていた。図抜けて頭がいいのはわかっていたが、その一方で、どこか世間知らずだったり常識外れだったりした。幼いころから勉強ばかりしていたというのを聞いて、晋さんは納得した。

「こういう妻をもったら、自分が世間と彼女とのバランスをとっていくしかないんだろうとも思いました」

 新居は晋さんの実家近くに定めた。子どもが生まれても、おそらく妻はすぐに仕事に戻りたがるだろう。それなら自分の親を頼ったほうが気が楽だと彼は感じた。しかも、こういう妻を作り出したのは彼女の母によるところが大きい。妻は自身の母親には逆らえないところがあり、親子関係に問題を抱えているように見えた。

「妻はとにかく自分の気持ちを丁寧に言葉にするのが苦手でした。ものごとを合理的かどうかで決めつけたり、感情を大事にしないところもあった。僕らは1年くらいつきあっていたんですが、最初のデートで行ったのは博物館だった。次のデートは『調べものがあるから図書館につきあって』と言われて。ひとり暮らしの僕の部屋に来たときも、話をするより本を読んでいました。あるとき、本を読むより話をしようと言ったら、何を話すのって。子どものころのこととか聞かせてよと言ったら、受験や塾の話ばかりでしたね」

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