「落札されず、すべての応募者が辞退」 国立劇場の建て替えはどうなる?

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 皇居の西側、半蔵門と桜田門の間に位置し、およそ半世紀にわたって日本の伝統芸能を支えた国立劇場と、隣接する国立演芸場が10月末をもって閉場する。

「国立劇場は昭和41年、国立演芸場は昭和54年の開場。閉場理由は激しい老朽化による建て替えです」

 とは歌舞伎担当記者。

「大劇場と小劇場を持つ国立劇場は伝統芸能の上演を目的に設置され、歌舞伎を中心に、能や狂言、日本舞踊などが上演されました。とくに歌舞伎は最初の演目から最後までを上演する“通し”を基本としつつ、三島由紀夫の新作歌舞伎にも門戸を開放。10代だった坂東玉三郎が大いに注目を集めたのも国立劇場での公演がきっかけでした」

「すべての応募者が辞退」

 ファン層の開拓にも取り組み、中高校生を対象とした歌舞伎鑑賞教室は55年にわたって続いた。閉場に際しては、昨年9月から「初代国立劇場さよなら特別公演」が続いており、現在は歌舞伎「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」が通し上演されているほか、文楽は「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」が披露されている。

「ところが、歌舞伎公演は席が半分も埋まっていないんです。13年前、銀座の歌舞伎座が建て替えのために一時閉館した時の『さよなら公演』は豪華な配役だったこともあって満員御礼が続きました。残念なことに、当時とは客の入りも熱気もまったく違いますね」

 10月末の閉場式を経て、両劇場は解体される予定だ。にもかかわらず、その後の雲行きは予断を許さない。

 社会部デスクが解説する。

「3年前、劇場を運営する日本芸術文化振興会は、PFI(民間資金を用いた社会資本整備)を活用した新劇場の整備計画を発表しました。そこでは上階にホテルやレストランを併設する構想でしたが、昨年10月の請負業者を決める入札には一社も応じなかった」

 やむなく振興会は、事業内容を見直し、再び入札を行うことを決めたという。

「今年6月に行われた2度目の入札は、数社が応じたものの落札に至りませんでした。その後も落札価額の調整などが行われましたが折り合わず、結局、すべての応募者が辞退することとなった。数年来の人件費や建設資材の高騰が要因で、振興会も3度目の入札の実施を検討していますが、時期はいまも明らかにされていません」

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