【どうする家康】戦国時代にありえない女性の大活躍 誤解を生んで今後へ悪影響も

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 女性の活躍促進は現在、政府を挙げて取り組むべき案件とされており、そのことを象徴するように、岸田文雄総理は内閣改造で、女性閣僚の人数を従来の2人から一挙に5人に増やした。むろん、女性を登用したほうが世間のウケがよく、支持率アップにつながると判断しての措置だろう。

 じつは、それに似た対処がNHK大河ドラマ『どうする家康』でも見られる。女性の活躍が目立つのである。おそらくは岸田総理と同様、そのほうが世間の受けがよく、視聴率アップにつながると判断しての措置、ではないかと思われる。

 しかし、このドラマで描かれているのは400年以上も昔の、女性が被抑圧的なジェンダーだったころの物語だ。視聴者のウケをねらって、そこでいきなり女性が活躍しはじめるなら、本末転倒であることはいうまでもない。

 では、戦国時代を描いたこのドラマのなかで、女性がどのように活躍しているのか。それは第34回「豊臣の花嫁」(9月3日放送)におけるいくつかの場面を振り返るだけでも、良く伝わると思う。

「おなごは男の駆け引きの道具ではない」

 臣従をしぶる家康のもとに秀吉は、実妹の旭(山田真歩)を正妻として嫁がせ、さらには家康が上洛するなら、保証として実母の大政所(高畑淳子)を三河に下向させるといってきた。これを受けて、家康の実母の於大の方(松嶋菜々子)と側室の於愛(広瀬アリス)が家康のもとにやってきて、「ご上洛なさるのですか?」と聞いた。

 しかし、家康にその気はない。於愛は「あちらは妹君に加えて、老いたる母君まで差し出すのに?」と問い、家康は「秀吉に跪けと申すか?」と答える。於愛が「あの2人が不憫なだけでございます」返すと、家康は「いらんおなごを押しつける。ここを姥捨て山とでも思っているらしい」

 それを受け、於愛の口調は厳しくなった。「殿、あまりにも酷い言いようにございます。旭様はあのように振舞われてはございますが、内心はどのようにお思いか。長年連れ添った旦那様と無理やり離縁されて、来たくもない国へきて、殿の正室になられ……」。 家康は「わしの正室は一人じゃ。サルの妹ではない」と反論する。

 そこで今度は、於大の方が次のように口をはさんだ。「人を思いやれるところが、そなたのとりえと思うておったがのう」。家康が「思いやりなどで国が守れるものか。これはわしと秀吉の駆け引きじゃ」というと、於大の方が反論する。「おなごは男の駆け引きの道具ではない」

 家康は「母上らしくない物言いですな」と返したが、於大は「だからこそせめて、蔑ろにされる者の心を思いやれる心だけは失うな、と申しておる」と語気を強める。そして於愛が言葉を継いだ。「旭様の侍女に聞きました。離縁した旦那様は行方知らずだそうでございます」

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