公判4日前に起訴取消し、それでも「謝罪はしません」と強弁した東京地検・女性検事の行状【大川原化工機冤罪事件】

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録音を提出すると発言を軌道修正

 高田弁護士は語る。

「塚部検事は大川原さんらの逮捕後、部下に大川原化工機の社員を聴取させました。その結果、5人から噴霧乾燥機の温度が上がり切らない部分があると話しているという報告を受けていました」

 しかし、それを認めなかった。

「塚部検事は当初、温度が上がりづらい箇所があるとの指摘があったことを知らなかったとの認識を示していましたが、こちらが取調べの録音を出すと、部下の検事からきちんと報告を受けていなかったと軌道修正しました。国側の代理人は、なんで録音を今ごろ出すんだと不満げでしたね」

 そして、塚部検事の手続きの瑕疵をこう説明する。

「応援検事が聴取した立件に不利な情報を知ったのなら、その段階でいったん止めるべきだった。でも、逮捕してしまっているので、勾留は20日しかできない。追起訴する準備もできていない。それならいったん勾留満期で釈放し、仕切り直してよく調べるべきでした。在宅起訴するか、別の機器で立件できると思ったなら再逮捕して起訴すればいい。彼女は身柄を放してしまったら台無しになると思ってしまい、無理筋で起訴したのでしょう」

経産省が公安部を後押し

 証人尋問で塚部検事は「温度が上がらない箇所があっても、湿度は一様に下がる。乾燥するから菌が死ぬ」など、温度ではなく湿度の話を熱心に語り出し、傍聴していた筆者も面食らった。

「2020年3月の後半に、急に湿度のことをやり出した。湿度論は彼女の発想ではなく、警察側の千葉大学の教授が乾燥で死ぬようなことを言っていたからでしょう。『湿度が一部だけ高いことはあり得ないので問題ない』としている。しかし、裏付ける補充捜査もせず、乾燥したら菌はみんな死ぬみたいにしてしまった。湿度については藤崎電機(現・株式会社GF)に追加調査させ、内部の温度が100度になると湿度が1%以下になると聞き、それだけ下がれば菌はみんな死ぬと考えたようです。しかし、それは4月2日ですから起訴(3月31日)の2日後。それも電話で安積(伸介)警部補に聞かせているだけで、自分で調べたわけでもない」

 この事件では経済産業省安全保障貿易管理課の笠間大介課長補佐が警視庁公安部に「ガサぐらいなら」と後押ししてしまったことも大きい。

 高田弁護士は「経産省の通達の作りに甘い所があることは、通常の検察官ならわかるはず。警察は法律部分をよくわかっていないこともあるでしょうが、検察官の彼女は法律の専門家です。しっかり押さえていなくてはならないはずでした」とし、こう結論づける。

「要は彼女にアンテナが足りなかった。警視庁公安部の任意取り調べの段階で、島田(順司・元取締役)さんと相嶋(静夫・元顧問)さんは罪を認めていたと勝手に思っていたようです。それが逮捕したら、みんな黙秘に転じた。なぜだろうかとアンテナを伸ばすべきでした。知らなかったでは済まない。塚部検事の過失は大きい。裁判所は塚部検事の義務違反を認め、国(検察庁)の責任を明確に示してほしい」

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