公判4日前に起訴取消し、それでも「謝罪はしません」と強弁した東京地検・女性検事の行状【大川原化工機冤罪事件】

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 大川原化工機(神奈川県横浜市)をめぐる冤罪事件は、今年6月30日に東京地裁(桃崎剛裁判長)で証人尋問が行われ、警視庁公安部外事一課の2人の現職警部補が自らの組織の捜査を捏造だったと「爆弾告白」した。同社の大川原正明社長らが東京都(警視庁)と国(検察庁)に約5億6000万円の損害賠償を求めて起こした国賠訴訟は、9月15日に結審する。原告側代理人を務める高田剛弁護士に、大川原社長らを起訴した検事の責任について解説してもらった。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

完全に滅菌・消毒(殺菌)できない

 2020年3月、大川原化工機の大川原正明社長ら幹部3人が「武器に転用できる噴霧乾燥機を中国に不正輸出した」との外為法(外国為替及び外国貿易法)違反の容疑で警視庁公安部に逮捕された。しかし、東京地検は、初公判の4日前になって起訴を取り消した。

 公安部が主張した「不正輸出」の法的根拠は、噴霧乾燥機に熱風を送り込み100度以上に上がれば、生物兵器の製造に使用した細菌を全て殺滅できるので作業者が安全に扱えるため、外為法上の貿易管理令違反になるという構図だった。

 しかし、大川原化工機の噴霧乾燥機は、熱風を吹き込んでも機械内に温度が低いままの部分があり、完全に滅菌・消毒(殺菌)することはできないことが同社の実験で確かめられている。

 それにもかかわらず、起訴した東京地検の塚部貴子検事は、大川原社長らへの謝罪について国賠訴訟審で問われると、「間違いがあったとは思っていないので謝罪はしません」と言い切った。

免れない塚部貴子検事の過失責任

 高田剛弁護士(和田倉門法律事務所)が9月8日に裁判所に提出した最終準備書面を読むと、異例の「起訴取り消し」となった冤罪事件の構図がよくわかる。

 7月5日の証人尋問で「判断は間違っていなかった。同じ状況なら起訴する」と強弁し、謝罪も拒否した塚部検事の部分について、一部引用する。

《塚部検事は、複数の原告会社従業員から温度が上がりづらい箇所の指摘があった旨、とりわけ熱風の行きわたらない乾燥室測定口の温度が上がりづらいことの報告を応援検事から受けたにもかかわらず、温度が上がりづらい箇所があったとしても噴霧乾燥機内部の湿度は一様に下がるのだから問題ないとの独自の理屈により原告会社従業員の指摘を黙殺し、その詳細の確認、追加捜査の指示など、温度の上がりづらい箇所の存否に関する捜査を一切行わなかった。》

《塚部検事はまた、時友(仁)警部補より、経済産業省が当初は殺菌解釈や判断基準を有しておらず、噴霧乾燥機業界全体としても輸出許可実績が藤崎電機の一件あるに過ぎないとの報告を起訴前に受けた。塚部検事は、経済産業省が該否基準を犯行当時定めていないのなら公判を保つことができないなどと時友警部補を責める一方で、経済産業省やシステック(筆者注:一般財団法人安全保障貿易情報センター)職員への確認、立法過程の精査など、本件要件ハ(同:定置状態で装置の滅菌ができること)の解釈に関する追加捜査を一切行わなかった。》

《こうして、法令解釈、殺菌性能の両面において従前把握していなかった重要な事実が顕出されたにもかかわらず、令和2年3月31日、塚部検事は、原告大川原らの身柄拘束を続けたまま、原告会社らの起訴を断行した。》

 時友警部補は6月30日の証人尋問で「(宮薗勇人警部に)事件潰れて責任取れんのかというのをずっと言われて」いたなどと証言した。

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