「通り魔予告」急増で「ソウルでは外出を躊躇する」異常事態 韓国人の苦痛の根源に“相対的剥奪感”

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男性ばかりが加害に及ぶ背景

 以上、韓国の今を表すメンタリティについて考察したが、日本社会にも共通している部分があまりにも多い。そして筆者はこの連続無差別殺傷事件を「韓国」という記号や「格差」の側面のみで語るのは一方的であると感じている。

 ヒントになりそうなのは、どの国においても、無差別殺傷の容疑者のほとんどが男性である点だ。生きづらさに男女差はないはずなのに、男性ばかりが被害感情を募らせ加害に及ぶ。DV、モラハラ、パワハラ、セクハラの加害者もほとんどが男性だ。生物学的な特性上どうにもならないという見方もあるが、一体何が男性の加害性を助長しているのか、それをいかに抑制していくかという社会変容にまつわる議論が求められているのではないか。

 そして多くの男性に対して、経済力が評価基準になりがちだ。結婚においても然りで、「経済力=子孫繁栄力」であることは、年収と婚姻率が比例していることからも明らかである。一部の強者男性が何度も結婚し「時間差一夫多妻」となっている一方、伴侶を得られず経済的にも恵まれなかった男性は存在を否定され、敗者とみなされる。

 そうした「すべてか無か」を突きつけられる構造を壊し、男性の人生についての再検討が必要なのだ。そしていずれは、お金や伴侶を得られなくても全ての人が自尊心を保てる社会をつくるべきなのである。

安宿緑
東京都生まれ。ライター、編集者。東京・小平市の朝鮮大学校を卒業後、米国系の大学院を修了。朝鮮青年同盟中央委員退任後に日本のメディアで活動を始める。2010年、北朝鮮の携帯電話画面を世界初報道、扶桑社『週刊SPA!』で担当した特集が金正男氏に読まれ「面白いね」とコメントされる。朝鮮半島と日本間の政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様と心の動きに主眼を置く。韓国心理学会正会員、米国心理学修士。著書に『実録・北の三叉路』(双葉社)。

デイリー新潮編集部

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